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文字数 493文字

 マリアはそんな頃、沈んだ顔で家のことを話し始めた。

「ワタシね、おかあさんの子じゃないがよ。
 本当のおかあさんが死んで、おとうさん今のおかあさんと再婚したが。
 今のおかあさんも最初は優しかったけど、弟ができたけん、ワタシはいらん子になったがよ。
 やけんいつもおかあさんにぶたれて、意地悪されようが。
 おとうさんが生きていた頃は、ワタシを助けてくれたけど、死んじゃったし……。
 だけどワタシおかあさんのこと恨んでないがよ。
 おかあさん病気やし、おとうさんが死んでからもワタシを育ててくれようけんね。
 やけんワタシ、実業団に入って、将来はオリンピック選手になって、おかあさん助けようと思いよったがに、走れんなって……」
 
 マリアは話しながら涙ぐんだ。
 
「だけど、中学生になって淳之介に会えたけん本当に良かった。
 だって、いつも淳之介がワタシに優しくしてくれるけん、ワタシそれだけで元気になれたがよ……」

 マリアの瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。

 淳之介はマリアの顔をハンカチで拭きながら、

「なんで泣くんだよ。
 マリアが泣くと、オレまで哀しくなるやいか……」

 と淳之介も涙ぐんでいる。




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