13

文字数 299文字

 淳之介はマリアが走る姿を美しいと思う。

 いつもヘラヘラしているマリアが、真剣な表情でグラウンドを飛ぶように走る姿を、教室からずっと眺めていた。

 十月に行われた市の陸上大会で、マリアは千五百メートルに出て、新記録を出して優勝した。

 二位以下を周回遅れにするブッチギリの勝利だった。

 マリアの出した記録は、男子の記録をも破るものだった。

 マリアは応援席の前を通る時、淳之介を見て投げキッスをした。淳之介の周りの生徒がドッと笑い、淳之介を冷やかす。

 真っ赤な顔をした淳之介が知らん顔をすると、更にマリアがニコニコと手を振り続けるのである。

 他校の生徒にまで笑われ、淳之介は早くここから帰りたいと思った。




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み