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シルフィたちが森を抜け、土と砂の斜面を進む頃には、すでについてくる人々は数えられないほどになり、まるで行進のようになっていた
なんとか来た道を思い出しながらたどり、目当ての洞窟に着いたころには、ずいぶんと日も落ちていた。
「ここだよ」
ずっとシルフィの横についていたジェラニに言うと、頷く。後ろについてきていた連中に命令口調でなにかを言うと、みな足を止めた。
さっきからの態度を見るに、ジェラニはずいぶんリーダー的な役割に慣れているように見えた。ついてきた連中が、自然に指示に従うのだ。
用意してきていた小ぶりなたいまつに火をつけ、集団のなかから腕っぷしの強そうな五人を選ぶと、一緒に洞窟へと入っていく。ついて行こうとしたシルフィは、
外で待っていろと言われた。
あの二人組とひと騒ぎあるかと、なかの様子を窺っていると、意外なことに、すぐに引き返してきた。
「どうしたの、ティシャはどこ?」
「いない」
「えっ」
「檻はあったが、誰もいない。バレたとわかって、あわてて引き払ったんだろう。扉が全部開けっぱなしだし、鍵は放り出したままだった」
「そうなんだ……」
「問題は、どこへ逃げたか、だな……。ここらへん、洞窟だらけだぞ」
ジェラニは考え込んだ。
なにか手がかりはないかと、シルフィはあたりをきょろきょろと見回す。
そこで、岩の隅でなにかが光った気がした。
近寄っていくと、木音の森で見た、あの蝶の模様が足元の岩肌に貼りついていた。
「蝶だ、蝶があるよ」
声をかけると、それがなにを意味するのか、ジェラニにはすぐわかったのだろう。駆け寄り、確かめると、まず近くに似たような洞窟がないか、探し始めた。隠れているかもしれないと思ったのだろう。
しかし、見つからない。
そうしていると、こちらの意図と関係なく、ただ手伝うふりをしていたような、まったく別方向を見ていたひとりが、声をあげた。
ジェラニが弾かれたように顔を上げ、その方向へと駆けだす。シルフィも迷うことなくついていった。
斜面の石のひとつに、蝶の印があった。前の岩の印から線を繋いだ先の方向を探すと、そこにもまた同じように印がつけてある。
「ティシャだな。印を残していったんだろう」
「うん。ペンみたいなの持ってたから、それだね」
「他の洞窟に隠したんじゃなく、こっち方向に連れて行ってしまったようだな」
「じゃあ、これを追っていけばいいんだ!」
「ああ」
ジェラニは頷くと、みなに蝶の印を探すように命じた。