第15話 革命
文字数 2,741文字
カイトと夏希と出会ってから、もかの心は変わった。
もっとかかわり方を改めようと考えた。しかしチャンスは何度も来るわけではない。
その日以来、海里と勝利は学校に来なくなった。
チャンスをなくしたことを薄々感じ始めた。同時にタイムリミットが迫っているのも感じる。
組織関係で学校に来なくなったということは何かが起き始めている。それは最近のキサラギの行動を見ていれば嫌でもわかってしまう。
それはこの前のルインの悪魔の発言からもわかる。
学校を終え自室で過ごしているとキサラギが帰ってくる。屋敷に走る緊張感と騒がしさですぐにわかる。
自室の前まで近づく足音に背筋が凍る。
「もか。すぐに出るぞ」
急いで部屋の扉を開ける。
目の前にいるキサラギに手を引かれ車に乗り込んだ。どこに行くのか、目的は何もわからない。私に選択肢などない。
しばらくして、大きなビルに着く。
コトクセンタービル。世界有数のファッション史に名を刻む日本でもトップの企業KtK。
そこで出迎えるのはもかも知っているディアンだった。
「久しぶりもかちゃん。行こっか」
不敵に微笑む口元に全身の毛が逆立ち恐怖する。勝手に体が震えだした。
「おい。行くぞ」
もかの手を力強く握るキサラギ。あまりの激痛に恐怖心が引っ込む。握っている右手はキサラギの手で握りつぶされていた。血が溢れ出すが、2人がそんな様子を気に留めることはない。
声を荒げるもかを引きずるように引っ張っていく。その間にキサラギの手からパワポを奪いもかの右腕は回復していく。
生き地獄。まさに二人にとってもかは道具そのものだった。
何階まで上がったのだろうか。少し時間がたつと、エレベータの扉が開き大きな部屋が顔を覗かせる。
その部屋に窓は一つもなく外の明かりが差し込むことはない。
それはまるでディアンの心の表れでもあるように外の変化は一切部屋に影響されることはなく薄暗く照らされる。
部屋の中央で立っているタクシードの美青年。
「デメール、準備できてる?」
ディアンの執事であるデメールは奥の部屋へともかを案内する。恐ろしかったが、行きたくないがそういうわけにもいかない。
「さ、一緒に行こう」
ディアンの目がうっとりしている。もかに向けられる異様な眼に、差し伸べられた手を素直に握れない。
しかし、そんなもかを無視しディアンは手を握り引っ張った。
薄暗く狭い部屋に置かれたカトリック的な置物。まるで儀式でもしているかのような部屋で、床には異様な魔法人が書かれてる。
もかを中央に立たせディアンは張り裂けるほど眼を見開き、瞳をハートへ変える。更にその奥から次々にハートを生み出していた。
脳がばぐったように異様な笑みを浮かべ、もかに抱きつく。
「さあ、死ぬほど気持ちい快楽を感じましょう!愛に溺れましょう!」
次の瞬間に魔法陣が浮き上がり、もかも張り切れんばかりに眼を見開き絶叫した。全身から液体が溢れ出す。涙をまき散らし、意識が飛びそうな程の快楽と激痛がもかの全身を襲う。失禁は止まることなく、口からあふれる唾液も止まらない。喉がはち切れそうなほどの絶叫が響く。
方向感覚も時間間隔も何もかもがわからない。永遠に続くように感じられる地獄。
ディアン。元Sランカーの彼女。最恐の二つ名をもち恐れられた彼女の恐ろしさを全身で感じる。悪魔に体の隅々が嬲られ侵される。理性など保ってられるはずがなかった。
しばらくして、儀式が終わったのか痛覚と快楽が消える。
「気持ちよかったね。またしよっか」
そう微笑んでもかは腕を引っ張られ部屋から出る。もかは放心状態だった。視界が定まらない。自分の両腕を見ると薄暗い悪魔の腕が重なって見える。遠い何処かの景色。
背中に感じる恐ろしい悪魔の世界。振り返るもそこにあるのは遠くにある壁。しかし、背後に感じる気配は消えない。
「見えないけど、見ようとしないほうがいいよ」
ディアンの言葉に振り返ると彼女の後ろに見える巨大などす黒い影。大きな黒いフードに鋭利な鎌。
恐怖のあまり固まって動けない。自分の体が言うことを聞かない。
死神はそんなもかにゆっくりと腕を伸ばし、鎌をもかの顎に触れさせる。
「もか。いくぞ」
キサラギの言葉に体が反応すると、いつの間にかその幻影は消えていた。
「あら。ここまで来たならと思ったんだけど」
「余計なことはしなくていい」
2人は互いに背を向ける。
「ほら行くぞ」
キサラギの隣に駆け寄るともかの手を握り連れていく。
「奴には警戒しろ」
静かにささやかれる言葉にもかは小さくうなずいた。
キサラギの車に乗り込みいつもの屋敷に戻る。
先ほどの言葉の意味を考えてもわからない。でも、どうしても引っ掛かりを覚えた。
あの言葉はどういった意味で言ったのか。そんなことを考えているとあっという間に家に着いた。
車を出るともかの隣にキサラギが並ぶ。そして、歩き出そうとしていたもかを制止する。
「車の中にあるトランクを持って逃げろ」
突然溢れ出す今まで感じたこともないパワポが爆風となってもかを襲う。地面からあふれ出す黒い霧が激しく波打った。そして、次の瞬間屋敷が跡形もなく消し飛んだ。
すると、瓦礫が赤く染まっている。よく目を凝らせば位、血まみれな瓦礫、体の一部、何にもの死体が転がっている。
同じ屋敷に住んでいる者ではない。
もかはすぐに理解した。政府の人間だと。もう始まるんだと。
「お前は生きなければいけない」
キサラギは振り返らず言った。その言葉の意味がわからなかった。道具、かけがえなない道具だからだろうか、唯一無二だからだろうか。ならなぜ自分がこんなに戸惑っているのかわからない。
いや、違う。その声色に戸惑っていた。いつもと違い、初めて出会った時のような言葉のぬくもりを感じた。
「いけ」
我に返ったもかは急いで車の中からトランクを抱きかかえる。
どこに行けばいいかなんてわからない。でも、今のもかはただ走ることしかできなかった。
キサラギは瓦礫となった屋敷を見ながら一人の相手に連絡を取る。
「状況は分かってます。相手はSTCOを遣っているようですが、勢力は負けてません。キサラギは第二塔へ殴りこんでください。そういうのが一番得意でしょう?」
「ああ。任せろ」
「ええ。号令を」
ルインの悪魔によって作られた回線。キサラギの部下だけではなくSTCO、六芒塔、闇市、市民全体に聞こえる回線でキサラギは高らかに宣言した。
隠す必要などないその声はこの世界に響き渡る。
「俺はキサラギだ。お前ら、今この瞬間全てが決まる。常識が覆る。全ての理不尽が反転する。俺たちが何者か教えてやれ。我々が主役だ、我らが世界だ。さあ、暴れろ。……革命の始まりだ」
もっとかかわり方を改めようと考えた。しかしチャンスは何度も来るわけではない。
その日以来、海里と勝利は学校に来なくなった。
チャンスをなくしたことを薄々感じ始めた。同時にタイムリミットが迫っているのも感じる。
組織関係で学校に来なくなったということは何かが起き始めている。それは最近のキサラギの行動を見ていれば嫌でもわかってしまう。
それはこの前のルインの悪魔の発言からもわかる。
学校を終え自室で過ごしているとキサラギが帰ってくる。屋敷に走る緊張感と騒がしさですぐにわかる。
自室の前まで近づく足音に背筋が凍る。
「もか。すぐに出るぞ」
急いで部屋の扉を開ける。
目の前にいるキサラギに手を引かれ車に乗り込んだ。どこに行くのか、目的は何もわからない。私に選択肢などない。
しばらくして、大きなビルに着く。
コトクセンタービル。世界有数のファッション史に名を刻む日本でもトップの企業KtK。
そこで出迎えるのはもかも知っているディアンだった。
「久しぶりもかちゃん。行こっか」
不敵に微笑む口元に全身の毛が逆立ち恐怖する。勝手に体が震えだした。
「おい。行くぞ」
もかの手を力強く握るキサラギ。あまりの激痛に恐怖心が引っ込む。握っている右手はキサラギの手で握りつぶされていた。血が溢れ出すが、2人がそんな様子を気に留めることはない。
声を荒げるもかを引きずるように引っ張っていく。その間にキサラギの手からパワポを奪いもかの右腕は回復していく。
生き地獄。まさに二人にとってもかは道具そのものだった。
何階まで上がったのだろうか。少し時間がたつと、エレベータの扉が開き大きな部屋が顔を覗かせる。
その部屋に窓は一つもなく外の明かりが差し込むことはない。
それはまるでディアンの心の表れでもあるように外の変化は一切部屋に影響されることはなく薄暗く照らされる。
部屋の中央で立っているタクシードの美青年。
「デメール、準備できてる?」
ディアンの執事であるデメールは奥の部屋へともかを案内する。恐ろしかったが、行きたくないがそういうわけにもいかない。
「さ、一緒に行こう」
ディアンの目がうっとりしている。もかに向けられる異様な眼に、差し伸べられた手を素直に握れない。
しかし、そんなもかを無視しディアンは手を握り引っ張った。
薄暗く狭い部屋に置かれたカトリック的な置物。まるで儀式でもしているかのような部屋で、床には異様な魔法人が書かれてる。
もかを中央に立たせディアンは張り裂けるほど眼を見開き、瞳をハートへ変える。更にその奥から次々にハートを生み出していた。
脳がばぐったように異様な笑みを浮かべ、もかに抱きつく。
「さあ、死ぬほど気持ちい快楽を感じましょう!愛に溺れましょう!」
次の瞬間に魔法陣が浮き上がり、もかも張り切れんばかりに眼を見開き絶叫した。全身から液体が溢れ出す。涙をまき散らし、意識が飛びそうな程の快楽と激痛がもかの全身を襲う。失禁は止まることなく、口からあふれる唾液も止まらない。喉がはち切れそうなほどの絶叫が響く。
方向感覚も時間間隔も何もかもがわからない。永遠に続くように感じられる地獄。
ディアン。元Sランカーの彼女。最恐の二つ名をもち恐れられた彼女の恐ろしさを全身で感じる。悪魔に体の隅々が嬲られ侵される。理性など保ってられるはずがなかった。
しばらくして、儀式が終わったのか痛覚と快楽が消える。
「気持ちよかったね。またしよっか」
そう微笑んでもかは腕を引っ張られ部屋から出る。もかは放心状態だった。視界が定まらない。自分の両腕を見ると薄暗い悪魔の腕が重なって見える。遠い何処かの景色。
背中に感じる恐ろしい悪魔の世界。振り返るもそこにあるのは遠くにある壁。しかし、背後に感じる気配は消えない。
「見えないけど、見ようとしないほうがいいよ」
ディアンの言葉に振り返ると彼女の後ろに見える巨大などす黒い影。大きな黒いフードに鋭利な鎌。
恐怖のあまり固まって動けない。自分の体が言うことを聞かない。
死神はそんなもかにゆっくりと腕を伸ばし、鎌をもかの顎に触れさせる。
「もか。いくぞ」
キサラギの言葉に体が反応すると、いつの間にかその幻影は消えていた。
「あら。ここまで来たならと思ったんだけど」
「余計なことはしなくていい」
2人は互いに背を向ける。
「ほら行くぞ」
キサラギの隣に駆け寄るともかの手を握り連れていく。
「奴には警戒しろ」
静かにささやかれる言葉にもかは小さくうなずいた。
キサラギの車に乗り込みいつもの屋敷に戻る。
先ほどの言葉の意味を考えてもわからない。でも、どうしても引っ掛かりを覚えた。
あの言葉はどういった意味で言ったのか。そんなことを考えているとあっという間に家に着いた。
車を出るともかの隣にキサラギが並ぶ。そして、歩き出そうとしていたもかを制止する。
「車の中にあるトランクを持って逃げろ」
突然溢れ出す今まで感じたこともないパワポが爆風となってもかを襲う。地面からあふれ出す黒い霧が激しく波打った。そして、次の瞬間屋敷が跡形もなく消し飛んだ。
すると、瓦礫が赤く染まっている。よく目を凝らせば位、血まみれな瓦礫、体の一部、何にもの死体が転がっている。
同じ屋敷に住んでいる者ではない。
もかはすぐに理解した。政府の人間だと。もう始まるんだと。
「お前は生きなければいけない」
キサラギは振り返らず言った。その言葉の意味がわからなかった。道具、かけがえなない道具だからだろうか、唯一無二だからだろうか。ならなぜ自分がこんなに戸惑っているのかわからない。
いや、違う。その声色に戸惑っていた。いつもと違い、初めて出会った時のような言葉のぬくもりを感じた。
「いけ」
我に返ったもかは急いで車の中からトランクを抱きかかえる。
どこに行けばいいかなんてわからない。でも、今のもかはただ走ることしかできなかった。
キサラギは瓦礫となった屋敷を見ながら一人の相手に連絡を取る。
「状況は分かってます。相手はSTCOを遣っているようですが、勢力は負けてません。キサラギは第二塔へ殴りこんでください。そういうのが一番得意でしょう?」
「ああ。任せろ」
「ええ。号令を」
ルインの悪魔によって作られた回線。キサラギの部下だけではなくSTCO、六芒塔、闇市、市民全体に聞こえる回線でキサラギは高らかに宣言した。
隠す必要などないその声はこの世界に響き渡る。
「俺はキサラギだ。お前ら、今この瞬間全てが決まる。常識が覆る。全ての理不尽が反転する。俺たちが何者か教えてやれ。我々が主役だ、我らが世界だ。さあ、暴れろ。……革命の始まりだ」