第24話 生徒会会長鏡味真理愛。

文字数 3,287文字

「やっぱり私も手伝う?」
 俺に優しく声をかけてくれる夏希。ただ渡らなくてもいい危険な道をわざわざ渡らせるなんて真似は俺にはできない。夏希の体にやけどの跡など残させたくはない。
「大丈夫だ」
 そう返し目の前の敵に集中する。二度までの火傷は覚悟し仕掛けようとした時だった。
 何者かが上から落ちてきてリーダー格の男の首筋を叩く。リーダー格の男は短いうめき声のだし倒れた。おそらく気絶した。突然上から現れた男が誰かは薄暗く瞬時には判断できなかった。しかし、青薔が何者かおしえてくれる。
「藍!ありがとー」
 青薔は俺の横を走っていき、そのまま藍に飛びついた。今回の件は一件落着と言うことでそれぞれ家に帰ることになった。俺は夏希と紗香と一緒に帰り、藍は青薔と一緒に帰るようだった。女性のカバンは藍と青薔が返し警察にも説明してくれるそう。
 俺は明日の学校の準備を済ませてからベットに入った。
 今回は本当にお世話になりっぱなしだった。転入生で初めてのことが多いにもかかわらず、とんだ面倒ごとに付き合わせてしまった。おかげ様か今日初めて会ったはずなのに全然そんな感じはしなかった。藍には本当に感謝しないと。
 ただそれとは別に気になることがあった。上から現れたことだ、おそらく上空を動ける何らかの能力者なのだろう。それに、明らかに手馴れている動きだった。明らかに俺よりも強いだろう。お金もち…仕事柄…。藍が言っていた言葉が気になった。いったい何者なのだろうか、正直頭がそこまで良くない俺にはわからないが色々な事情がありそうだ。考えても仕方がないし、寝るか。
 俺は考えることを辞め眠りについた。
 次の日の放課後、自然と俺の席の周りにみんなが集まってくる。俺はみんなに向けていった。
「じゃあ、いくか」
 その言葉と同時に移動を始めた。運動部があまり得意じゃない紗香と意外にも青薔が運動部以外がいいと言った。夏希は音楽系が苦手らしく、だいぶ絞ることができた。そこまでこだわりのない藍は全然それら以外の部活でも大丈夫だという。もちろん俺はどこでもいい。道着を着ながらスニーカーを履き、ゴルフバックを背負いながらヴァイオリンを演奏し歌を歌いながら四百メートル走るのも全然大丈夫だ。
 俺たちは絞り込まれた選択肢の中から華道部をまずは選んだ。生け花を実際に経験させて貰えた。俺は才がなくなかなかうまく作れなかった。紗香は普通といった感じらしい。藍は青薔と一緒に作り共同作品となっている。この中で一番才能を見せたのは意外にも夏希だった。部員が言うには、一番この部活のいい所はお菓子がいっぱい食べれるところらしい。ああ、確かに魅力的だ。
 部員の説明を聞いていたカイトと青薔は並んで同じように人差し指を口元に置き目を輝かせた。
「はいはい、次もあるんでしょ行くわよ」
「はい、行くぞー」
 夏希と藍はそれぞれカイトと青薔に声をかける。夏希はカイトを引きずるように引っ張っていき、藍は青薔を引きずるように引っ張っていた。紗香は華道部の人たちに皆の代わりにお礼を伝え、他の部活動へ向かった。
 次は美術部。好きなように絵を描いていいと言われ俺は鉛筆で絵を描くことにした。藍と青薔は相変わらず二人でカップルの様に共同作業をしていた。いや、ようく見てみると青薔が勝手にお節介をかけているみたいだ。いや、青薔にされるがままだ。紗香は絵の具で描いているみたいで中々にうまい。俺はみんなで集まった立ち絵を描いた。自分で言うのもなんだが俺は結構絵がうまい方だ。美術部の人にも褒められ入部を進められた、悪い気分ではないが皆と同じ部活に入らなければ意味がないので、考えておくと答えた。華道部で才能を発揮した夏希はと言うと…いや、触れないでおこう。
 他の部活を見て回るが、体験をしていない部活や集まっていない部活ちらほらとあった。そして、校内を歩いていると、一つ気になる部活があった。教室の扉の窓に張られている紙には文芸部と書かれていた。だが、文芸部などという部活はこの学校では聞いたことなかった。皆に聞いてみたが藍はもちろんのこと青薔も誰も知っている人はいなかった。
 すると俺たちに声おかけてくる一人の女性がいた。
「どうかされましたか?」
 その丁寧な言葉使いの女子生徒を見るや否や、俺たちは戸惑ってしまう。藍は多分美人な女性としか思っていないと思う。うちの学校は他と比べて変わっていることがある。それは生徒会が大きな権力を持っていること。その為学校では敬われることが多くちょっとした有名人になる。そんな中、今年の生徒会は例年よりも、そして去年から注目さていた。なぜなら女神のように美しく顔が整っており、日本では珍しい白色の金髪。おまけにとても心優しいと噂さされている。そのんな非の打ち所がない彼女の名前は鏡味真理愛、この学校で一番有名な美人生徒会会長で正真正銘のお嬢様だ。
 戸惑っている俺たちの代わりに何も知らない藍が答えた。
「転入してきたんですけど、皆と一緒に部活を見て回ってて」
「あら、そうだったの。私たちの部活も見てく?」
「ぜひ」
 真理愛さんは教室のドアのカギを開けると中に案内してくれる。たくさんの本棚には、たくさんの本が置かれていた。その本棚が壁を埋めるように置かれている。そして、真ん中には大きなテーブルが置かれ、そのテーブルを囲う様にいすが置かれていた。それにしても図書室に負けないぐらい用意されている本の量に驚いた。
「本の量に驚いたでしょう。と言っても今までの先輩たちの受けよりもあって、漫画の方が多いの。こっちの棚にはフィギアだったり、ゲームボードだってあるのよ」
 俺でも見覚えのあるような有名な漫画やライトノベルがたくさん置かれていた。それにしても、どんな部活なんだ。俺は自然と夏希に目線を向けた。するっと、夏希も助けて欲しそうな目で俺を見つめている。真理愛さんと一緒な空間にいることが異常過ぎて落ち着かない。
 すると、真理愛さんは一番窓側に座る。まるで普段からそこに座っているかの様だった。
「好きに座っていいわよ。いろいろ聞きたいこともあると思うから出来る限り答えるわ」
 真理愛さんの言葉を俺たちは素直に聞き椅子に座った。すると真理愛さんは優しく話し始めた。
「あのね、かしこまらなくても全然いいのよ。それで、この部活の事だけど活動内容は楽しむことよ。好きなようにお話しして、好きなように遊ぶの」
「そんな部活許されるの?」
 そう堂々と聞く藍にこちらがビビってしまう。
「ええ。この部活は私たち生徒会が作った生徒会のための部活だから。私たちの学校は、他の学校の生徒会よりも大きな力思ってるの。その代わり生徒会が行わないといけない仕事は多くてね、学校行事は私たち生徒会が取り仕切らないといけないの。その代わりとしてね、一年間の活動結果をみて好き大学や企業の推薦を頂けるのよ。でもね、やっぱり生徒会は大変なの。先輩方がせっかくの青春を味わいたいって思って出来たのがこの文芸部。部活動の承認は私たち生徒会のお仕事だからね。それに表向きに公表はしていないけど、隠してるわけでもないのよ。ずっと前の台からあるのに意外と気付かれてなかったりするのよね、不思議だわ。」
 俺はそんな真理愛さんに緊張しながらも質問した。
「なんで…どうして私たちに部活動を紹介してくれたんですか?」
 すると、くすっと笑いながら答えてくれる。いや、俺惚れそう。
「こう見えても勧誘してるつもりだったのよ。駄目だったかしら」
「「喜んで入らせていただきます」」
 俺と藍は食い気味に真理愛さんに返事をした。断る理由など微塵もないという友としての熱い眼差しが藍から伝わってくる。ああ、もちろんだ。
「藍~」
 そう言って立ち上がる青薔は藍に飛び込んでいった。青薔に襲われている藍を見て俺は笑っていると、なぜか隣にいた夏希から危険信号をピりピりと感じる。夏希は怒っていた。なんでだああああと、心の声で叫んだ。
 結局俺たち五人は文芸部に入ることが決まり、藍との友情がより深いものとなった。
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