第28話 バス遠足

文字数 1,556文字

 バス遠足当日、班ごとに一列に並んで班長が出席確認を行いクラスの会長に報告する。しばらくすると生徒会長が現れ少しざわつき始めた。だいぶ見慣れてしまっていた俺たちは、周りの反応に新鮮味を感じる。生徒会長の真理愛さんが挨拶を空いた後、班ごとに一列に並んだ状態でバスに乗り込む。バスに乗り込むと、手前から順番に座るように指示される。班長で藍を先頭に並んでいたため、バスの座席は藍と青薔、その後ろに紗香と夏希、そのまた後ろに駿と俺となった。
 俺は駿にパワポの使い方を熱心に聞き、頑張ってイメージ集中させていた。そんな間にバスは出発し目的の山へ向かう。
 その途中、前の席に座っている夏希と紗香は最近よく聞いている音楽で盛り上がっていた。そのアーティストの名前は「キセキ」。実は俺も最近知ってよく聞いている。
 俺は駿に聞いてみた。
「なあ、駿はキセキって知ってるか」
「アーティストのですか?」
「ああ」
「きいてますよ。ここ最近いきなり動画投稿サイトに浮上して、人気急上昇に乗り続けているまさにその名の通り「キセキ」です。まだ一曲しか出てなくて、どこの誰かも分からない性別も年齢も何も分からない不思議なアーティストです!」
「あ、ああ」
 思ったよりも熱い返事に驚いた。駿とは一緒にゲームするぐらいで趣味などあまり知らないことが多いんだなと痛感する。もっともっと仲良くなりたいと俺は感じた。
 すると前に座っていた紗香が身を乗り出して話に乗ってくる。
「しかも、その曲を聞いてると不思議といいことが起きるらしいですよ!噂になってるんですよ、普段よりも勉強に集中できたとか、スポーツでよりいい成績が残せたとか」
「まあ、ほとんど都市伝説みたいな突飛推しもない噂だけどね」
 夏希がそう付け加える。
「いや、でもほんと凄げーよな。ここだけで四人とも知って。しかも聞いてんだぜ」
「なになに?なんの話?」
 さらに前の席の青薔も身を乗り出して着てくる。
「キセキっていうアーティストの話です」
 駿の返事に藍も食いついて体を乗り出しながら答える。
「あーでた。キセキね、知ってる知ってる。青薔も凄い聞いてそう」
 青薔恥ずかしそうに頭をかきながら言った。
「私聞いてない…」
「「「え!」」」
 みんなの驚きの声がハモった。ああ、俺もすごく驚いた。青薔はすっごい歌好きと自分でも自負してるし皆もそれは知っていた。皆にどうしてか質問攻めにされ、おどおどしている青薔を見るのはこれが初めてかもしれない。



STCO 大阪 本部 
地下九階 総監督指令室
 STCO最高責任者津崎龍雅は、報告資料に目を通しながら思わず声を漏らす。
「おいおいおい、嘘だろ…。なぜだ、そんな価値が井坂藍にはあるのか?ひとまずは相手の狙いが井坂藍の命であるのは確定だ。だから、殺されるだけなら問題はない…だがな、こいつを呼とは…。」
 突然タブが空中に開く。通信の通知であるそのタブを津崎龍雅はタップした。
「情報部総合」
「いいから要件を先にいえ」
「はっ。妨害無線で井坂藍及び山一帯への通信が取れません。」
「直ちに部隊を向かわせろ」
「はっ」
 津崎龍雅はタブを閉じてからただ一人同じ部屋にいる秘書の女性に命令を下す。
「殿草に連絡しておけ、報告次第すぐ動けるようにそれと防衛大臣にもだ」
「防衛大臣にもですか?」
「ああ。井坂藍の命を狙ってるやつが全国指名手配犯、世界最強最悪の超能力者。トム・ユーイング・ルーズベルトに依頼を出しやがった。」
「そんな…でも彼の事ですから、お金だけ受け取り放棄するのでは?」
「ああ、そうだと言いな。だがやつの依頼地では東京都立星川高校が遠足をしている。おそらく今の所はすべて奴の計画道理に進んでいるだろう。さあ、どうするかだ…。」
 津崎龍雅は敵の新たな攻撃を備えるための準備を始めた。
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