第23話 カイト危ないかもしれません。

文字数 1,796文字

「どうしてここが分かったんだ」
 俺の問いかけに後ろに立っている紗香が答える。
「私の千里眼で」
「ああ、なるほどな。所で藍は?」
「なんかね、皆は先行ってって。お金払っとくし、お金持ちだから大丈夫だって」
 気の抜けた声でこたえてくれる青薔。青薔の言葉が物理的にも精神的にも余裕をくれる。俺は続けて夏希の目を見ていった。
「夏希、あいつは頼めるか」
「ええ、任せなさい」
 夏希は俺に並ぶように立ち言った。夏希は柔道有段者、俺と同じように超能力は持っていないがそこらへんにいる男よりは全然強い。
 夏希の相手はひったくり犯で俺の相手はリーダー格の男だ。相手は俺たちに同時に襲ってきた。決して動きが速いわけではないが、明らかに動きは場慣れしているようだった。心配で夏希の方を見るが問題ないようだった。早々に決着は付きそうだ。
 問題は俺の相手だ、敵は何かを狙っているような動きをしている。何を狙っているのかわからない以上下手につめれない。なかなか決着がつかないでいると横から夏希の声がする。
「カイト、手伝う?」
 どうやら夏希の方は決着がついたみたいだった。さすがは夏希、任せてよかった。
「カイトー頑張れー!」
 どこか他人行儀なそんな青薔の応援が聞こえてくる。夏希の手助けを受けようと思っていたが今回は諦めよう。
「大丈夫だ」
 俺は夏希に伝える。夏希は紗香と青薔の隣に戻り二人を守るように立ってくれる。
「ちっ、くそがあああ」
 男は舌打ちをすると唐突に吠え、両手広げ何か力を込めていた。すると男の両手が黄色に変わっていき熱が伝わってくる。最悪だ、男は超能力者だった。パッと見、熱を操る能力に見える。不幸中の幸いか、炎まで飛ばしてくるような強力な超能力ではないだろうがつかまれたら厄介だ。相手を掴むことを前提とした柔道とは相性は悪いだろう。結果的に夏希に戦わせなくてよかった。いや、もしかしたらこれを予期して青薔は……。いやいやいや、そんなことはないだろう今は目の前の問題に集中しよう。

「カイト……まずいかもな」
 上空から戦いを覗いていた藍は小さな声でつぶやいた。藍の超能力見えない壁を作り、その上に乗って上空にいた。なぜ藍がここにいるのかと言うと少し前にさかのぼる。
 ファミマを飛び出していったカイト一人じゃ危ないかもしれないため、皆も一緒にカイトの元へ向かうように促した。青薔も俺の意見に乗ってくれて皆は紗香の千里眼と言う便利な超能力を使ってカイトの後を追いかけて行った。
 藍はみんなの分の会計を済ませ、改めてひったくりにあった女性に向き直った。
「小町さん、なんでここに?」
 OL姿の彼女は小町七瀬。非戦闘員で藍の部隊のオペレーターを担当してた人だ。
「ただの仕事よ。ここでコーヒー飲みながらしてたの。そしたら藍がきたから切りがいい所でここを出ようとしたのよ」
「って言う事は大切な資料があのカバンの中に?」
「ええ、そうね」
「大丈夫なんですか?」
「いいえ。だから後処理はお願いね」
 藍はため息交じりに小町七瀬に言う。
「はいはい」
 そして、途中で振り返り小町七瀬に聞く。
「あ、これ借り一つです?」
 小町七瀬は少し黙ってから観念して言った。
「…わかったわ」
「ありがとうございます!」
 藍は小町七瀬に元気よく言葉を返すと走っていった。
 小町七瀬は電話のため少しだけ外に出ると定員に伝え、外に出て人気のない所で無線を使い連絡する。
「こちら部隊KSA所属オペレーター、小町七瀬」
「…………どうしましたか」
「対象、井坂藍と接触しました。疑いは軽度だと思われます。また、何者かに資料を奪われました。現在、井坂藍に回収を命じています」
「…………対象の監視は引き続き継続してください。資料の即座消去はしないで、泳がせてください。」
「了解」
 小町七瀬は無線を切った後おでこに手を当て、大きなため息をついた。

STCO 大阪 本部 
地下九階 総監督指令室
「よろしかったんですか」
 司書の女性が聞いた。
 椅子に腰深く座っているSTCO最高責任者津崎龍雅は、部隊KSAの資料に目をとおいながら言う。
「ああ。大きな問題になることはないだろう。いざと言う時は殿草に後始末は頼んであるからな。それより、井坂藍の情報を欲しがっている大元の方が気がかりだ。もしかすると、我々以上に知っているかもしれん。それこそ闇市の統治者六芒塔総塔第一塔のゼティスよりもな」
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