第19話 始業式でした。

文字数 1,246文字

 家からパンをくわえながら走って来た俺は、校門の前でゼェゼェと息を切らせている。周りを見ると生徒達は誰も急いでいる仕草は見せずゆったり歩いていた。
 不思議に思っていると、左側から聞きなれた声がする。
「おーい。カイトー」
 声の方へ振り向くと夏希がいた。そして、その隣には夏希の親友、成瀬紗香がいる。紗香は俺の目の前まで来てから丁寧に頭を下げ挨拶をした。
「おはよう…あ、二回目」
 確に二回目だった。俺がランニング途中で夏希とあって学校の事を思い出し家に変える途中で、出会った女性が彼女だった。
 俺は一つの疑問を口にする。
「で、何でみんなこんなにゆっくり歩いてるんだ」
 すると夏希は笑いながら言った。
「やっぱり…今日は初日で新入生もいるからいつもより遅いのよ」
「な…」
 言葉につまっている俺に、夏希と紗香は顔を見合わせて笑った。そして、少ししてから紗香が口を開いく。
「さっ、行きましょ。今日はクラス発表なんですから」
 その言葉を聞いて俺たち三人は校舎へと歩きはじめる。校門で会った事もあり、一緒にクラスを確認する事になった。
 玄関の前に張られたクラス表を三人で確認する。周りはたくさんの人で賑わっていた。
「同じクラスになれたらいいなー」
 クラス表を見ながら俺は言った。夏希もクラス表に顔を近づけながら少し笑って答える。
「紗香とは一緒になりたなー」
「え、俺は」
「カイトは居なくてもいい」
「え、ひどくね」
 俺はクラス表を確認しながら棒読みで言った。お互い顔を見ること無くクラス表に目を通すだけだった。
「あ、ありましたありました、ここです」
 紗香の声に釣られて夏希と俺は一緒にのぞき込む。
「うちはー、あ、あった、同じじゃん!」
「あ、俺もだ」
 夏希と俺は交互に言った。その言葉を聞き紗香は驚いたように言う。
「ええ、今年は運よさそー」
 俺も本当にそう思えた。
「そうね!」
「だな!」
 俺と夏希は賛同する。クラスを確認した俺たちは同じクラスなので、結局一緒に教室に行くことに。クラスに入って一緒に黒板を見て座席を確認した。
「お、やったぜ。後ろから3番目だ」
「あ、私は一番後ろです」
「な…」
「えーと、うちは…」
 夏希は言葉を切った後、わざとらしくゆっくり俺の顔を見ながら言う。
「後ろから二番目」
「なに」
 ラッキーだと思っていた俺がこの中で一番前の席だったとは。よりにもよって、夏希にまけるとは…悔しい。
 すると、紗香がもう一度座席を確認して言った。
「カイトくん…一個後ろの席じゃないです?」
「え」
 次は夏希が声を出す。
「え?」
 俺はもう一度確認するとすぐに間違えていた事に気づいた。俺は後ろから二番目の席。俺はニヤリと笑いながら夏希の方を向いた。
「ふふふ」
「ん~」
 夏希が黙りこんで俺を見つめた。どうだ‼俺は目で訴えた。ふんっで?私と並んだだけじゃない!と、夏希も目で訴えてくる。すかさず…まっ、俺の席は隣が窓だがな!夏希も…で?私の席の後ろは紗香よ?と、いがみ合っている俺と夏希を止めるのは、いつも紗香であった。
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