第41話 標的の差し替え

文字数 2,022文字

 体育館でカイトと駿はバレーボールを持ちラリーをしていた、とりあえずボールの扱いになれるために。
 「なぁ、駿。ポルターガイストとかの心霊現象って、パワポの発見で説明できるようになったのか?」
「そうですね……一応だいぶ証明できるようになったはずですよ、陰陽師と深い関係のある神社に伝わる書物に魔術が出て来てますからね」
「魔術?魔法じゃなくてか」
聞きなれない言葉にカイトは思わず少しずれた場所にトスを出してしてしまう。しかし、駿は機敏に反応しフォローしてくれた。やはり。駿の運動神経は対して悪くない……それもきっとパワポを使って超能力を使えるからだろう。
「パワポが発見される前の古い言い方が魔術なだけで同じものですよ。ま、同じものなので魔法でもいいですけど、安倍晴明ってしってます?」
 いろいろな類の娯楽に名前として登場してくる有名人だとカイトは理解している。いつも教えて貰ってばかりなカイトは自身まんまんに駿へ返事を返した。
「ああ、もちろん!」
「彼は、言い伝えによると死界の行き来や対話などができたと言われているんですよ。今まで迷信だった陰陽師の呪文が、魔法として現代社会に現れるようになった事を考えれば、死界の存在もいずれ証明でき行き来することも可能かもしれないですね。妖怪とかは死界の生き物って言いますから、妖怪が僕たちの世界に降りてきて悪さするかもしれませんね」
「って言う事は、死んだ人と話せたり……生き返らせることも」
「会話なら、もしかしたらこの先何とかなるかもですけど……さすがに」
 駿の言葉はそこでいったん止まる。無意識だろうが駿は考え事をするとき、決まって右手で顎を抑える。改めて真剣に悩んでいる時の駿の集中力は異常と思えるほどのオーラを放つ。まるで別人のような鋭い目線からは脅威すら感じられる。カイトは駿と目線が合うことに睨まれているとも感じとれ思わず唾をのんだ。
 思考を辞めたのか、先ほどまでとは言ってした態度で話始める。カイトは、こういった意味では案外駿は分かりやすいものだなと感じた。
「あり得るかもしれいですな……でもその場合、体はどうやって用意するんでしょうね。魂のよりどころとなる生きた人間が必要になりますね」
 思ったよりも非人道的な内容にカイトは思わず口を噤む。
「死者蘇生はまだまだ壁が多くて現実味が薄いので置いとくとしても、死界との会話……死者との会話は結構現実味あるんじゃないですか?そうしたら殺人事件などの場合には調査にかなり貢献できますね」
「ああ」
 カイトは駿の言葉に短くはっきりと答えた。


数か月前

 バス遠足中に事故に巻き込まっれた駿、カイトくん、紗香さん、夏希さんは警察に連れていかれ、大型病院に着いた。そこである程度の身体検査と、事情徴収を受ける。
 病室で紗香さんと一緒に手当てされていた駿はお互い顔を見合わせてクスッと笑った。カイトが物凄い力を見せて助けてくれたおかげで、二人ともかすり傷しかおっていなかった。それなのにもかかわらず大型病院で検査されていた二人は大袈裟だねと二人で話していた。カイトは初めての超能力で、パワポを酷使しすぎ、リバウンドで気を失ってしまったみたい。体に大きな怪我はなく、周りはうるさいのにもかかわらずベットの上でぐっすりと眠っていた。カイトのお腹を枕のようにうつ伏せに夏希も寝ている。疲れて寝ている二人の姿から助けるために頑張ってくれたという事実を痛いほど痛感させられる。しかし、改めてお似合いの二人だなと駿は思いつつ視線を紗香の方に戻すと、ちょうど目が合った。駿の思いが伝わったのか紗香さんは小さな声で言いた。
「本当にお似合いですね」
「そうですよね……二人はその自覚ないみたいですけど」
 駿はそういうとまた二人して笑った。
 
駿は改めて孝蔵と周磨の二人の事を思い出し、顔には出さず心の中で紗香さんにつらい思いをさせてしまった事を誤っていた。
 トレッキング中にまさか孝蔵と周磨が現れるとは――いや、違う。そもそも前提条件が間違えていた。カイトくんや夏希さん、藍くんや青薔さんと一緒にいれば、孝蔵と周磨は関わってこないだろうというのはとても都合のいい考え方だ。
 どうしてこんな楽観的な思考をしてしまったのだろうか。
それはきっと、自分にとって都合のいい状況に甘んじてしまったがゆえに起きてしまった。
今笑っている紗香の、この顔を守るために。
 学校が始まってから駿はまず孝蔵と周磨の行動を確認した。一番手っ取り早くかつ効率的に解決させる方法は、標的をかえささせること。
 ノートの切れ端に出来るだけ小さく魔法陣を書き込み、両手で挟み込みながら発動させる。紙にあらかじめ魔法陣を描くことにより、魔法陣生成の難易度を一気に下げることができる。さらに、魔法陣から出る光は小さくなるため両手で十分に隠すことができる。
 この魔法はいわゆる盗聴器。これを孝蔵と周磨いずれかに仕掛け有益な情報を抜き取る
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