第26話 六人の仲間。

文字数 1,933文字

 僕は二人の男の先輩方に言われた通り後ろを着いて歩き体育館倉庫裏まで来た。そして、今日も僕が先輩たちの練習台になる。僕が二人の先輩たちのお菓子を買ってきて、超能力の練習としてサンドバックにされる。体中に傷ができた。でも、もちろん抵抗なんて許されない。でも仕方がないことだから、僕がその役目を引き受ければすべてが丸く収まるんだ。
 二人の先輩の名前は北室孝蔵と光信周磨。この二人はこの学校一番の上位カーストで、この学校の生徒を牛耳っていると言われているほど悪名高い。だから、この先輩二人に口出しできる人なんてだれもいない。目をつけられたらそれが最後。だから、口出しするような人が居たらそれはただの馬鹿だ。
「おい!何してる!」
 そんな馬鹿が僕の目の前に飛び出してきた。あの時の路地裏で遅れて助けに来たカイトくんが僕をかばうように先輩たちの前に立ちふさがる。
「あ?誰だよお前」
「こっちはそいつと練習してただけなんだが」

「カイト!」
 夏希の声が聞こえ、振り返ると夏希の隣には藍もいた。藍は歩いて俺の隣に来ると聞いてきた。
「誰?」
 俺も知らないので、答えられないでいると夏希の様子がおかしいことに気が付いた。俺の元に近づいてこない、いや、二人の先輩に近づかないようにしていた。そして、小さな声で俺の名前をこぼす。
「カイト…」
「挨拶してやるよ!」
 夏希の方を見てよそ見してい俺に一人が殴りかかってきた。よそ見をし身構えていなかった俺は反応できない。その拳を藍が手のひらで受け止め俺をかばってくれる。藍の反射速度の良さに驚いた。どれぐらい強いかはわからないが、直感で感じるその強が安心感を与えてくれる。そして、もっと強くならなければならないとも感じる。
「これが挨拶?」
 藍の問いかけに、いきなり殴りかかった先輩は頭をかきながら笑って言った。
「ごめんごめん、冗談だよ。ちょっと脅かそうと思ってさ、俺の名前は北室孝蔵。で、こっちが光信周磨って言うんだよ。聞いたことないか?」
 その言葉を聞いて俺は驚いた。この二人が噂の……。俺は二人の先輩のなめ腐ったような態度に腹が立った。しかし、何も知らない藍は普通に言葉を返す。
「転入生だから」
「そっかあ、それは仕方ないな。じゃあまずはこの学校のルールってもんを教え込まないとな」
 そう言って孝蔵は藍の肩に手をのせる。俺は嫌な予感を感じ孝蔵に向かって怒鳴った。
「おい、何する気だ!」
 孝蔵は一度俺の方を見てから笑いながら藍を見て言った。
「俺たち先輩だからちゃんと敬わなきゃいけないんだよ。それで何のためにここに来たのかな?」
「友達の姿が見えたんで、一緒に行く予定だったのにすっぽかしんですよー」
 藍は落ち着いたようすで答える。いつも感じている藍のその心の余裕が少し青薔に似ている気がする。
「だって、どうなの駿?」
 傷だらけの駿に孝蔵は笑いながら問いかける。藍と駿はおそらく接点はないはずだ、本当に大丈夫なのだろうか。そんな不安を駆り立たせるように孝蔵はもう一度駿に質問する。
「どうなの?」
「うん」
 駿は俯きながら小さく頷いた。
「先約があったなんて、それは駄目じゃないか。ほら行っておいで」
「夏希の方に行っておいでー」
 藍の言葉に駿は何も言わず従い。夏希は駿を保護するように手を掴んで連れて行く。
 俺は最後までなめ腐ったような二人の態度に怒りが収まらなかった。しかし、それを藍が抑制する。
「っさ、いこー」
 そう言って藍は俺の手を掴んで歩いて行った。
 藍と一緒に部室に戻ると、すでにみんながいた。紗香は駿の傷の手当てをしている。すると、青薔が元気よく言う。
「また部員増えたね!」
 青薔の言葉に驚いたように顔を上げる駿。しかし、いいアイデアだと思った。生徒会のこの部活はどこよりも安全で、流石にあの二人も手出しはできない。
「いいなそれ!駿入部だ!」
 俺は笑って駿にグーサインをおくる。それに続いて夏希もいう。
「これからよろしくね」
 駿の傷の手当てをしていた紗香は優しく微笑んでいった。。
「歓迎しますよー」
 それから俺たちは自己紹介とこの部活の事を説明した。青薔の紹介したいと言っていた友達は駿の事だったみたいだ。それから、真理愛さんも喜んで駿の入部を認めてくれて、正式に加入することに。それと、生徒会側も北室孝蔵と光信周磨は要注意人物として目を付けており、注意はしているみたいだった。いずれ、なんとかしたいみたいだけど、中々そうもいかないらしい。
 俺たちは新たに駿と言う仲間が加わり、日常的に六人で過ごすようになった。ここまで仲良くなれる仲間に出合えた奇跡に本当に感謝しかない。最高に楽しい高校二年生を送ることができると、この時の俺はまだそう思っていた。
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