第29話 命がけで逃げます

文字数 2,151文字

 しばらくして山のふもとに着くとバスが止まり皆はそこで下ろされた。ここからは軽いトレッキング形式でバーベキュー場まで行く。目的地のバーベキュー場までは、初級、中級、上級と三つのルートが用意されていて六人で決めることに。他の班は直ぐに決まり移動を始めたが、俺たちの班は上級と初級で意見が綺麗に割れた。なかなか決まらないでいると、生徒会長の真理愛さんが隣に副生徒会長の栗原さんを連れて声をかけてくる。俺たちは挨拶すると、真理愛さんは返事を栗原さんは無言で会釈する。
「ここまでついてこないといけないんですね」
「私たち二人が二年生を担当しているからね。でも、三年生もこの山でトレッキングしてるのよ。ルートは全然違うから会うことはないけれど…。あ、ごめんなさい時間を取らせてしまって、早く決めた方がいいと思うわ。それじゃあ、また次の機会に」
真理愛さんはそう言って歩き始めた。栗原さんは俺たちの方を見ながら一言こういった。
「中級を選べばいいかと」
 栗原さんは直ぐに真理愛さんの隣に並び歩く。周りを見たら先生以外の生徒はもういなかった。
「中級行こ」
 藍の言葉にみんなは頷き歩きはじめた。
たわいのない会話をしながらしばらく山道を歩くと開けた道路に出る。今更俺は三つのルートの違いを理解した。初級は歩きやすい道路をずっと進み、中級は半分山道で半分道路、上級はずっと山道と言うことだ.
 少し歩くと突然藍の方から電子機器の音が鳴る。何かの通知だろうか。藍はその通知でビクッとう動きが止まった。
「お、なんだなんか連絡来たのか?」
 少ししてから藍は俺に向かって言った。
「ごめん、先行ってて。連絡の確認との確認と…漏れそう」
「え、いつから我慢してたんだよ…」
「バス乗る前…」
「先行っとけよな、目的地の場所分かるか?」
「大丈夫、ちゃんと合流するよ」
藍はそう言って森の中に戻っていく。
藍は森に戻ってから少し歩き、周りに誰もいないことを確認してからSTCOの任務時に使う専用の端末に来た連絡を確認する。何の事前報告もなく来た唐突の通知に戸惑ってしまうが、何とか適当にごまかせてよかった。
七瀬さんからの連絡で緊急任務の説明のために目標の場所で落合おうとの事だった。任務の事なら無線で連絡すればいいだけなのではと、少し違和感を覚えながらも送られてきたマップを開き目標地まで移動する。目印は大きな岩と写真付きで送られている。なぜ衛星で移される自動追尾マップではなく、ただの画像なのか違和感は消えなかった。そんなことを考えている間にも目的地は近かったためか直ぐについた。しかし、その岩場には誰もいない。やはりおかしいと思いもう一度端末を開こうとした時、突然岩の上に高身長の男が現れた。明らかに日本人ではないその男に驚いた。どうやっていきなり目の前に現れたのか、石原先輩と同じようなテレポートの類なのだろうか。どこかで見覚えのある男は藍に声をかけてきた。
「本当に来るとは…。念のために聞いとく。お前が井坂藍か?」
 素直に答えるかべきか答えないべきか悩んでいると、ついさっきまで岩の上にいた男が藍の目の前に洗ばれるのと同時に地面がえぐれるように爆発する。爆発をもろに食らい数メートル吹き飛ばされるが綺麗に着地し何が起こったのか状況整理をする。そして、男からか持ち出すパワポが肌で感じるほど莫大なものとなって藍を襲った。圧倒的な力を目の前にその男が誰かを思い出した。
「やっぱいいや。ころしてからかくにんすればいいし」
 そう発する男の名はトム・ユーイング・ルーズベルト。実在として見るのは初めてで絶対に勝ち目がないことを肌でひしひしと感じる。勝ち目がない藍に出来ることはただ逃げるだけだ。藍は男から命がけで逃げ出した。
「いいぜ、少しだけ遊んでやるよ」
なぜこんな化け物に狙ばれるのか思い当たる節はなかった。相手は悪魔でも傭兵で誰かの依頼で藍の命を狙っているのだろう。しかし、この仕事柄今まで何人かは殺してきたが一人一人名も分からないものばかりだ。そもそもこの世界に私情を挟み、復讐に身を投じるなど馬鹿のすること。そんなきもちを抱きながら藍はその場から離れるように逃げた。背中を守るように少し大きめな見えない壁を作り逃げる。しばらくしても攻撃してこないと思った矢先に地面がえぐれ爆発する。どういう攻撃でどんな能力かは全くわからない。対策仕様がない、そもそも勝ち目もない、生きて帰れる訳がない。ただ最後まで最善の選択を取るだけだった。遊ばれているのは分かっている。地面から離した足元の地面がえぐれるように爆発する。もう一度端末を開き本部に状況を伝えようするがつながらない。ジャマ―か?計画的な犯行だとすぐに理解した。
逃げた先は崖となっていた。
「どうする?」
 姿は見えないがどこからともなく声が聞こえる。それと同時に何が飛んできていると咄嗟に感じすぐ横に壁を作りそれを蹴って回避した。すると同時に先まで藍のいた地面が先ほどよりも更に大きく地面をえぐり爆発した。間違いなく即死していた。藍は再び崖に沿うようにさっきよりも必死に走った。すると、どこからともなく聞こえる笑い声と同時に地面から足を離すたびに爆発した。藍はただひたすらに走り、体力のある限りを尽くした。
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