王女

文字数 638文字

「ご遺体は、お預かりできませんので、一旦家に送ります。通夜の時に、改めて移しますので。」
 葬儀場の人の説明が終わると、皆、帰り支度を始めた。

 やばい、ここで引き離されてはたまらない。
「キャー!」
 しまった、葬儀場の人に見つかった。
「塩、塩。」
 親父が騒ぐ。しかたがない、王女、ごめん。
「人間1に憑依。」

 王女についたまま、彼女の家に戻ってきた。王女は車の中でも泣いていた。普段、笑っているとこしかみたことがなかった。僕が死んで悲しいのか、自分が殺したと思って後悔しているのかはわからない。生き返る前に、何とかこいつが死なない方法を見つけたい。それに、このまま自分の体に戻ってもオネエになってしまう。
「カタツムリ1、憑依できます。」
 よし、こいつもナメクジと一緒だ、
「カタツムリに憑依。」

 塀伝いに、自分の家に向かう。殻があるから、母さんに見つかっても潰されることはないだろうが、しかし、遅い。しかも、こいつときたら暑い昼間は日陰しか移動しない。通夜は早ければ明日の夜だろう。
 どうやって、家に潜り込むか。ゴキブリは危険だ。家の周りの蟻や蚊はメスばかりだろう。ペットのメダカなどでは身動きが取れない。野良犬はあたかも
「お前の内蔵を食べたい。」
 という目つきで近づいてくる。

 夜中になり、日が落ちるとカタツムリは動き始めた。家の壁を伝い、僕の体があるであろう居間の壁に張り付く。しかし、ここから入る方法はない。そのまま、朝を迎えてしまった。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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