王と玉

文字数 418文字

 渾身の一編だ。この死別を連想させる詩を吊り橋の上で渡せば、ドキドキの相乗効果。

 僕は普通の中学三年。名前を除いては。
 鳥野・玉子。
 タマゴではない。ましてや、タマコでもない。ギョクジ。なんで、こんな名前になったかと言えば、夢見がちな母親が、トリノオリンピックを見ていて、手紙の宛名が『トリノ・王子様』になると考えた。ところがだ。将棋好きの親父が、あっちが王なら、こっちは玉だと、玉子にしてしまった。
 なぜ、そんな暴挙にでたのかと言えば、たまたま隣に住む親父の将棋相手に、女の子が産まれ、これまた、たまたま名前の届出に訪れた役所で、一緒になった。隣は『王女』。読みはオウメ。負けず嫌いな親父は、その場で点を増やしてしまった。
「男だから玉付きだ。」
 子は親を選べない。ましてや名前は決められない。今では、大人になったら名前を変えようとあきらめている。

 王子と王女のほうがまだよかった。玉子と王女。どうみても釣り合わない。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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