失踪

文字数 592文字

 朝になった。辺りが騒がしい。
「オウメちゃんが、いないの。」
 しまった。自殺する気だ。とにかく止めなければ。しかたがない。このまま、生き返るか。いや、まずオスの生物を探そう。
「いませんねえ。夜中には、ダニが何匹かいたんですがね。よく眠っていらっしゃたので起こしませんでした。明るくなって隠れちゃいましたね。」
 死神のやつ、人のことだと思ってのんきなこといってやがる。寝たのは失敗だった。まずは、あいつの行きそうなところを考えよう。自分がシェークスピアだったら、どんなストーリーにする?
 服毒死。いや、中学生だ。そんなもの簡単に毒が手に入るわけがない。ナイフか包丁か。あいつ、意外と血が嫌いだからな。電車に飛び込むってのはどうだ。人に迷惑をかけるようなことはしないな。だいたい、シェークスピアにしては美しくない。僕に文才があればなあ。

 もし、逆の立場だったらどうする。僕は、自殺の場所をどこにするだろうか。ホームズのように、状況から推理しろ。人はそうそう簡単に死ぬ場所を思いつくもんじゃない。誰かが、死んだ場所。そうだ、僕が死んだあの場所に違いない。
 群馬のみどり市にある『けさかけ橋』。僕が落ちたところだ。怖い吊り橋として人気がでたので、市と共同で自然公園内にオウメの親父が温泉宿を始めることになった。ちょうどいいということで、僕らは開業前に特別に泊めてもらったのだ。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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