血液・バンク・ユーザ

文字数 720文字

 ヤゴの生活は気楽だ。水底を歩いて移動する。アカムシと違うので魚に見つからないように隠れられる。早く、川下に移動したいが、こいつら流れのおだやかな水草の中にいてあまり移動しない。できれば魚に憑依したいが、やっぱりレベル1だと無理かな。
 水中が薄暗くなってきた。すると、こいつが草を伝って水の上に出た。
「羽化だ!」
 順調に行けば、明日にはトンボになるはずだ。自分の姿が見えないので種類はわからない。とりあえず明日まで休むか。目もかすんできた。次第に体が溶けるのがわかる。やだなあ。明日に備えて、戦略を練ろう。

 レベル1なら憑依できるのが昆虫ぐらいかな。とにかく憑依を繰り返して、レベルを上げるしかなさそうだ。魚に寄生して運んでもらうのがいいな。
「ヘルプ!5万レベルってどのくらいで到達できるの?」
「通常の鬼様で、1日あれば到達できます。」
 1日って500年じゃないか!
「ポイント10倍みたいなのはないの?」
「お客様、ラッキーです。ただ今、血液・バンク・ユーザなら、レベル100倍サービス期間中です。」
 なんだ、あるんじゃない。
「それどうやってなるの?」
 僕は死神の営業口調に少々いらいらついていた。
「はい。貧血ぎみの青鬼様のために、血の池に輸血用血液を1000リットル以上ご提供いただいたお客様には、もれなくレベルが100倍になるというものです。さらに、期間限定、地獄泉ペアチケット付き。」
 血をそんなに取ったら死んじゃうでしょ。
「長い年月かけて血を抜きますから、ご安心を。」
 いや、そんなに時間かけてらんないって。
「今回は一週間のお試しユーザということで特別ですよ。」

「レベルが100になりました。」
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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