トンボで初体験?

文字数 597文字

 遅々として進まなかった今までのいらいらが、うそのようだ。トンボは快適だ。グライダーのように滑らかに飛ぶ。川下に向かうにつれ青いマーカーの中心が大きくなる。これって近づいている証拠だよな。でも、生まれ変わってもトンボはいやだ。空を飛べるのは面白そうだが、一生の大半を水の中で暮らすんだから。人間はこの姿を成虫と呼ぶが、こいつらにしたら死出の旅立ちって感じかもしれないなあ。

 順調に進んでると思った矢先、いきなり後ろ上から衝撃が襲ってきた。別のトンボが僕のトンボをつかもうとしている。
「やばい、こいつメスだと思ってる。」
 トンボのオスは、メスの首の後ろをつかんで、飛びながら交尾をするらしい。動物は苦手だが、雑学には詳しい。運動で王女に勝てない僕は、知識で勝とうとしていた時期があった。
「こんな、初体験はいやだ!」

 うまくつかめなくて、あきらめてくれた。こんなところでロスしている場合じゃない。川幅が徐々に広くなる。急がないと、滝とかあったら、体がばらばらになるかもしれない。と、トンボは細い棒の上に止まって動かなくなった。
「何かを見ている。」
 くるくるくるくる。目が回る。
「子供だ。女の子だ。指をぐるぐる回して、僕の目を回そうというのか。」
 トンボは頭と目を色々な方向に動かしているらしく、まるでジェットコースタの映像でも見ているかのようだ。
「やめろ。急いでるだから。」
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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