吊り橋

文字数 531文字

 中学最後ということで、冬休みの終わりに隣同士の家で旅行しようということになった。実際は親父どもが温泉に入って将棋をしたいだけだ。

「高校別々だね。」
 オウメが旅館のそばの橋の上で言った。親父たちは将棋、お袋たちは温泉の後のマッサージ。夕飯までには、まだ時間がある。やることのない僕らは散歩に出た。
 二人きりで歩くなんて、何年ぶりだろう。僕は黙ったまま歩いた。ここには、僕らの名前でからかうやつもいない。よく女の子に間違われるほどの華奢な僕だ。周りは女子二人が歩いていると思っているのかもしれない。

「すぐ先に、有名な橋があるんだ。行ってみない。」
 オウメからの誘いだ。赤くなりそうな顔をうつむきながら隠す。5分ほど曲がりくねった坂道を歩いたろうか。
 古い木の橋が見えた。吊り橋だ。かなり年季が入っている。『危険!注意!』の看板がある。
「早くおいでよ。」
 彼女は臆することなく、橋の中央までいく。

 足がすくむ。よくこんなとこ歩けるなあ。両手でロープをしっかりと握りながら横に進む。風も無いのに、突然、橋が揺れる。オウメが笑いながら揺らしている。
「ヤメロー!」
 怖さで涙が出そうになるのを必死に抑える。それでも何とか彼女の横までやってきた。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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