馬券

文字数 712文字

 ハエはアブがいなくなると外に出ようと移動し始めた。今出て行くと、アブの二の舞になる。待ってくれ!
「スパーン!」
 願いも空しく、僕とハエは場外へと飛ばされてしまった。

 ハエはしばらく気絶していた。体には怪我らしきものはない。意外とタフだ。しかし、羽を痛めたのか、まだ目が回っているのか飛ぼうとしない。

「馬1、憑依できます。」
 飛ばされてきたのは、近くの競馬場だ。
 とりあえず、馬に取り憑く。
「本日の午後、最終レース。まもなく、出走します。馬券をお求めのかたはお早くお願いします。」

「午後、馬成る。あ、ちょっと馬券買ってきます。」
 死神め、競馬で遊んでんじゃない。
「憑依した馬が勝てば、オッズに従って賭けた寿命が伸びます。レベル1000イベントですね。余命で最低額しか買えませんでしたけど頑張ってください。追跡マーカー切ります。」
 それって、負ければ死ぬってことでしょ。

「パーン!」
 乾いた空砲の音と共に、一斉に馬が飛び出した。競馬に命賭けるやつって、例えじゃないんだから。馬は集団の後方につけている。まだ、力をためているって感じだな。徐々に順位を上げてく。最終コーナーで3番手からインに切り込んだ。一気に逃げにかかる。速い速い。ぶっちぎりの一着。

「いやー、よかったですね。大穴ですよ。教えられませんけど、この寿命、ギネスものですよ。あ、審査のランプが付きました。鬼オッズなので、人間への適用は後で審査があるようです。」
 これが、あの手、この手、鬼の手ってやつか。

 喜びの余韻に浸るまもなく、警報が鳴った。
「次に憑依したほうがいいですよ。この馬、まもなく心臓発作で死にますから。」
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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