一発芸

文字数 586文字

 体が目の前にあるのに、確認ができない。
「ワンチャンスですからね。慎重に。」
 GPSの鬼は確認できているんだろうに、教えてくれない。誤認識もあった。安心できない。このまま、到着するまでカメムシの寿命がもつかも心配だ。

「ウケればレベル2倍のサービルタイム。カメムシさんは挑戦なさるそうです。」
 何、勝手に決めてるの。せっかく、静かに隠れているのに、余計なことをしないでくれ。
「では、一発芸をどうぞ。」

「何か臭いませんか。」
 母の声だ。
「窓、開けます。」
 運転手は押し殺すように小声で言った。
「カメムシでしょ。絶対、カメですよ。カメ。」
 母さんはゴキブリは一発で仕留めるのに、カメムシは大きらいだ。理由は簡単で、叩きつぶせないから。
 車内はパニックになった。
「近くで止まりますから。落ち着いて。」
 運転手にさとされながら、近くのコンビニに車は止まった。運転手は長い靴べらを出すと、先端に粘着面を表にしてガムテープを巻きだした。どちらも、葬儀会社にとっては必需品だ。カメムシは危険があってもほとんど逃げない。そのため、いとも簡単にテープにくっついた。あとは、殺さないようにガムテでぐるぐる巻きにされる。

 このままだと、ゴミ箱行きだ。
「次の憑依先、探して。」
「一発芸、成功と判定されました。レベル1000です。」
「ハエ1に憑依できます。」
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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