アブさん
文字数 442文字
車は小さなパーキングエリアで止まった。トイレ休憩か。少しすると周りを茶色い大きな虫が飛びながら取り囲んでいる。
「ハチさん?」
いや、アブだ。こいつら、僕のハエを襲おうというのか。運転手はアブ避けのスプレーをまいた。だが、そんなのは気休めにしかならない。
「車の中に入れてくれ!」
願いも空しく車はすぐに出発した。
ハエは助手席のサイドミラーの隙間から裏に入った。アブは同じ側の窓の上の風のあたらない場所からこちらを睨んでいる。移動中は風圧でどちらも動けない。高速の間は止まることは無いだろう。早くあきらめて、いなくなって欲しい。時々、憑依可能のアナウンスが入るが、今、この車から離れるわけにはいかない。
硬直状態が続く。車は、ついに僕達の住む街の葬儀会社についた。ドアがゆっくりと開く。満を持してアブが飛び立つ。
「パチーン!」
激しい音と共に、アブは空の彼方へと飛び去った。場外ホームランだ。後には、勝ち誇ったように仁王立ちする、右手にスリッパを持った母親がいた。
「ハチさん?」
いや、アブだ。こいつら、僕のハエを襲おうというのか。運転手はアブ避けのスプレーをまいた。だが、そんなのは気休めにしかならない。
「車の中に入れてくれ!」
願いも空しく車はすぐに出発した。
ハエは助手席のサイドミラーの隙間から裏に入った。アブは同じ側の窓の上の風のあたらない場所からこちらを睨んでいる。移動中は風圧でどちらも動けない。高速の間は止まることは無いだろう。早くあきらめて、いなくなって欲しい。時々、憑依可能のアナウンスが入るが、今、この車から離れるわけにはいかない。
硬直状態が続く。車は、ついに僕達の住む街の葬儀会社についた。ドアがゆっくりと開く。満を持してアブが飛び立つ。
「パチーン!」
激しい音と共に、アブは空の彼方へと飛び去った。場外ホームランだ。後には、勝ち誇ったように仁王立ちする、右手にスリッパを持った母親がいた。