大脱走

文字数 619文字

 ネズミが生きているってことは、こいつら自由に出入りしているはずだ。きっと、出口を知っているに違いない。マーカーに従って、移動を始めた。配管をつたい、器用に上っていく。指に吸盤でもあるのか?さらに、ジャンプ力も半端無い。
 こいつら忍者だ。ネズミ対策の粘着シートも、お構い無しに走っていく。ふと、後ろを見ると、何匹もついくる。ネズミというのは集団で移動している。だか、こいつらに大事な体を食い荒らされてはたまらない。できれば直前に別のものになりたい。
 地下から、暗い空調用のダクトを抜け、一匹また一匹と吹き出し口から顔を出しては素早く走って抜け出す。

 マーカーが移動を始めた。きっと霊柩車が来たんだ。ネズミは地下の裏口へ向かった。まだ十匹ほどのネズミが追ってくる。グレーのワゴンだ。最近はあの黒と金のやつではないんだ。それとも、ケチったか。
 ストレッチャーが車に入っていく。棺ではない。シートにくるんでの移動のようだ。ネズミ軍団が車に向かって走った。大人たちがさわぐ。スリッパを片手に奮闘しているおばさんがいる。どうやら道案内に母さんを残して、他の皆は先に帰ったようだ。

「カメムシ1、憑依可能。」
 見ると、車の周りに赤いマーカーが動いている。
「カメムシに憑依。」
 カメムシは車の中に飛び込んだ。誰も気付いてない。こいつなら、母さんといえど、うかつには叩けないだろう。

 憑依が解けたネズミたちは散り散りに逃げていった。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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