思い出

文字数 471文字

 カワウソのやつ、蛇の臭いに釣られていたんだ。
「個人情報、漏れなくて良かったじゃないですか。」
 死神め、のんきなことを。
「水没したら、もう使えないんだから。」
 果たして、データは無事なんだろうか?今は、確認する手段がない。
「そうですか?では、捨てますか。」
「待って、待って。」
 冗談じゃない。大事なデータも入ってるんだ。王女との思い出もつまっている。

「今頃、あいつ心配してるかなあ。」
 事故とはいえ、自分が突き落としたことに代わりはない。
「とりあえず、無事なことを伝えたいなあ。」
 ぼそりと漏らすと、
「ライフライン使いますか?」
 死神が声をかけてきた。
「いや、呼んでないから。こんなんまで、聞かれてるのか?」
「はい、地獄耳ですから。でも、口外はしませんよ。守秘義務がありますから。」

 あいつの泣き顔って想像できないなあ。いつだって、笑ってる。つらいことが、無いのかなあ。それに比べて、僕はたいてい眉間にしわを寄せている子供だった。これも、親父がつけた名前のせいだ。笑っている思い出は、あいつといた時だけだ。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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