小中大

文字数 615文字

 希望が持てたことで景色を見る余裕もできた。わたらせ渓谷鐵道は、狭い谷あいを進む、眺めのよい鉄道だ。ワンマンが増える中、女性車掌や女性運転手がいるのも珍しい。鉄オタとしては節約よりもサービスを重視してもらいたい。トロッコ列車以外はそれほど込まない。
 夜のうちに雨でも降ったのか、川は茶色く濁り増水しているようだ。電車は左右に蛇行しながら、川上へと上っていく。観光客のために駅の停車時間は長めだ。帰りは、自転車のほうが早いかもしれない。古い町並みもところどころに見える。

 以前、トロッコ列車に乗ったことがある。雨の日だったのであいにくだったが、トンネルに入ると天井にイルミネーションが光った。お弁当も駅で頼んでおくと、途中で届けてくれる。今回は急ぎの旅だ。そんな余裕はない。王女を助けたら、ゆっくり楽しもう。あいつは、景色より食い気だろうけど。

 小中駅にやっと着いた。目指すは小中大滝。小・中・大ってどんな滝かと思ったが、小中にある大滝ってことらしい。紛らわしいが、ある意味すばらしいネーミングセンスだ。ほぼ一本道。急ではないが登りばかりで自転車にはきつい。以外にオネエってのは力があるもんだ。
「死神。最後がメスメダカだっからオネエになったんじゃないのか?」
 死神は調子よく説明を始めた。
「運よくメダカが性転換したんで、オスです。」
 メダカや金魚はというのは、メスばっかりでいるとオスに変わるやつが出てくるらしい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み