ど根性ガエル

文字数 758文字

「蛙1に憑依できます。」
 まずは、蛙に移動しよう。
「午後、同じく桂、じゃなかった蛙。」
 死神のやつ何してんだ。
「寄譜をつけてるんですよ。モニターですから、記録はとっておかないと。」

 蛙は、急いで、葬儀場へ戻る。葬儀までには速くても2、3日はある。だが、話が大きくなるとやっかいだ。葬儀の最中に生き返ったら、何て言えばいいんだ。ただいまか?

 さっきの寿命ってどのくらい延びるんだろうか?
「鬼たちは、担当の亡者を取りつかせています。亡者の寿命は数千年から数万年ありますからね。その馬が勝てばオッズに応じて賭けた寿命が亡者に与えられます。地獄で痛めつける期間が増えますから、鬼たちは真剣ですよ。ただ、亡者と人間では寿命そのものが違いますからね。このまま万馬券を適用すると人類滅亡の時まで生き残れます。」
 いや、そんなに長生きしなくったって。

 街中は車の通りが激しい。よく、蛙が車にひかれている。とにかく、気をつけて一刻も早く戻ってくれ。
「カエルだ!」
 幼児たちの群れがいる。保育園の散歩だろうか。やばい。こういうやつらはすぐに追いかけてくる。余命があまり無いことを考えると、捕まったら最後、尻にストローを突っ込まれて風船ガエルにされかねない。必死に逃げるカエル。追いかける園児。やつらは力加減を知らない。捕まえるというより、叩き潰す勢いだ。何度もペッタンコに潰されそうになる。
「根性、根性、ど根性で逃げろ。」

 僕も小さいころ、王女に怒られたな。あいつはガサツだが、動物とか面倒見がいい。卵からヒヨコをかえしたこともあった。名前でからかわれて、不登校になった時に、両親は穴熊を決め込んだ僕に手が出なかったが、あいつだけは
「玉ちゃんも、自分の殻から出なよ。」
 と、引っ張り出されたものだ。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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