通夜

文字数 695文字

 日が出てくると、カタツムリは動かなくなった。
「警告!まもなく寿命です。」
 近くには、ペットのメダカしかいない。オスかメスかわからないが、とりあえず憑依しよう。

「全部、メスですね。」
 これで、部屋には入れた。水槽の中から、自分の死体を見る。
「間違いない。僕だ。」

「おめでとうございます。では、入れ替えますので、タッチしてください。」
 いや、今はオネエモードでしょ。それに、水槽にいるのにタッチできないし。
「基本、鬼ですからね。タッチしないと入れ替われません。」
 それって、鬼ごっこじゃん。
「鬼ゲーですからねえ。」
 とにかく、一回オスになってからじゃないと。

 10時を過ぎると、人の出入りが増えた。葬儀会社の人や、近所の人が来る。生き返りづらい状況になっていく。いや、今はあいつの命もかかっている。とりあえず、様子を見るか。通夜は葬儀場でするものと思っていたが、どうやら自宅で行うらしい。そうか、まだ中三だから通夜に来る人間なんて限られてるし、友達も自宅のほうが来やすいと考えたんだろう。
 雌雄同体ってどんな生物がいるか、色々考えてみた。しかし、いざとなると思いつかない。やはり、ミミズとかか。葬儀場へは、今の状況なら、オウメ経由で行ける。あせる必要はない。経験上、それまでこいつの寿命はもつだろう。

 夜になって、親戚や近所の人が集まりだした。しかし、自分の通夜を見るなんて、奇妙な感じだ。家族葬にしたらしく、中学校の連中は通夜に顔を出しては、帰っていく。母は人前では涙ぐんでいるが、絶対演技だ。だまされて、うかつなものに憑依すると、スリッパの餌食になる。
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登場人物紹介

とりの ぎょくじ(玉子)

中学三年

王女の幼馴染で隣に住む

鉄道オタク

生物の雑学がある

いづみ おうめ(王女)

中学三年

玉子の幼馴染で隣に住む

ヘルパー死神

玉子の担当死神

おっちょこちょい

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