第44話 影を追いかけて

文字数 322文字

その猫は、立ち止まることにした。
このままでいい。ずっと、ここで待っていたい。
走り疲れたわけじゃない。
ただ、その方がいいと思ったから。

ゴロー太は、走った。
走り続けていれば、きっと、どこかに辿り着く。
そう思う。
ただ、今は考えたくなかったから。

夕日が影を映した。
どこかに繋がっていればいいのに。
走っていても、立ち止まっていても、
影の思いは変わらない。

その猫は、遠くをぼんやりと見つめた。
茜色に染まった街、心の中まで染まってしまいそうだ。
震える足が、何故だかわかるような気がする。
感じるままに受け入れれば、いいのだろう。

ゴロー太は、影を追いかけた。
届きそうで届かない。
そんなものだと、わかったような気がする。
ゴロー太は、影が見えなくなっても走り続けた。
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