第59話 君が見た未来

文字数 341文字

雲の切れ目から射す光の当たる場所を目指してゴロー太は走る。
そこには、そこには光がある。
風がいたずらにその場所を転々と変えながら、雲はたゆたう。
光の中心でゴロー太は懐かしく思う。
風と一緒に旅をしながら、きっとそうなのだと思った。
叫びたい心を抑えて、仰ぎ見る空はそこだけ輝いている。
君が託した未来、止めることの出来ない涙のわけ、
君が夢見た未来、やっと手にできた望みのカケラ、
君が見つめた未来、今そこにある失うことのできない絆。

君が見た未来がそこにあるのだと、ゴロー太は思った。
立ち止まれば光の輪は無くなってしまう。
駆け抜けていく風を追いかけて、ゴロー太は走り続けた。
光が消えるたび、心も消える思いがする。
忘れないように、浮かぶ光景を心に焼き付けた。
忘れないように、ゴロー太は走り続ける。
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