第34話 凜の鐘

文字数 264文字

ゴロー太は、名も無い岬を走り去る。
その岬から見えるのは、時折瞬く船の灯りと、
月明かりに照らされた波の跡。
聞こえるのは、汽笛と風、波の音。
感じるのは、冷たい潮風。

送る歌は再会を、
迎える歌は永遠を待っている。
風と波に混ざって、微かに聞こえる鐘の音。
その響きは優しく話しかけるように、
その響きは思いを込めて囁くように、
心を震わせる。

名も無い岬で出会えるのは、記憶にも残せなかった出来事。
思い出すことの無かったこと。
忘れてしまいたいこと。
それは聞き方によって違うらしい。
だけど、同じ音色が聞こえ続けることもある。
記憶を乗り越えるまでは。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み