第67話 時の魔法

文字数 225文字

ずっと守り続けたのに、記憶が溶け出してしまう。
時は悪戯に過ぎるばかりじゃないと、
初めて思ったことが、まほろばを失って行く。
抱えきれない星に願えば、夜明けが駆け寄ってくる。
同じ場所を歩いているつもりでも、しだいに離れてゆくように、
一瞬という永年の時が、越えることのない壁に翳した絵に変わって行く。

それがいい。
それがきっと正しいことのだとわかっていても、
振り返ることも躊躇われることだってある。

走り続けたその道は、決して無駄じゃなかったと、
今でもおもう。
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