第69話 二つの道

文字数 365文字

どこまでも続く、ただ真っ直ぐな道を走り続ける猫がいる。
探してる。どこまでも透き通った青い瞳をもつ猫がいる。
記憶の中で、今にも消えそうな虚ろな風景。
いくつかの丘を越え、白い砂浜にたどり着く。
それも悪くない。考えていたことより、ずっと悪くない。

夢の丘で、手紙をそっと風に乗せて、
何度も振り返っては話しかける。
手を伸ばせば届きそうで、指で囲って見せてみる。
光がいっぱい差しこむ窓を付けて、
大きな影を追いかけた。

夢の積み木で、いかだを作って河に浮かべ、
木っ端ミジンコになりながらも、ここに来たことを思う。
永い橋を途中で引き返し、それでいい、それでいいと言いきかせても、
夕日の影を見ては、ずっとこれが続けばと思えればいい。

どこまでも続く、ただ真っ直ぐな道を走り続ける猫がいる。
どこまでも透き通った青い瞳をもつ猫がいる。

道はずっと二つのまま。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み