第108話 Blue Mile

文字数 374文字

ゴロー太は、迷ったことがない。
戻る必要が無いからだ。
右も、左も、どっちでもいい。
だけど、いつも、決められない。

秋が来て、冬が来て、あと少しで春が来るというのに、
雪が降る。
その上を歩いて、ときどき、振り返ってみる。
それが、なんだか、うれしい。

雪の代わりに、雨になった。
消えていく足跡を見て、ゴロー太は、立ち止まる。
その跡が、雨に変わる頃、来た道を忘れる。
それが、なんだか、哀しい。

ゴロー太は、遠くを見ない。
未来は、いつだって、霞んで見える。
走り着いた場所が、月夜なら、
ここで休んでも、良いかもしれない。

小さなカケラを握りしめて、走った。
いつしか、持っていることを忘れる日が、来るのだろうか。
時々、覗いては、嬉しくなって、
時々、目を閉じてみる。
どんなに走っても、僅かでしか、ないのなら、
ずっと、走るだけ。
終わってしまうより、終わらない道を、選んでみた。
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