第50話 命の値段

文字数 451文字

ちっぽけな夢を見よう。
明日じゃなく、すぐに出来そうな、
どうでもいい夢を見よう。
忘れたっていい。
粉々になる夢よりずっといいかもしれない。
使い捨ての夢なら誰も傷つかないさ。

永い橋の途中には、いくつかの出店があって、
その中で気になる看板を見つけた。
「いのち買います」
ゴロー太は店主に聞いてみた。
命を売った者は、運命が変わるそうだ。
店主は命を仕入れては神様に返すという。
試しにゴロー太は、自分の命がいくらで売れるのか聞いてみた。
すると、ほとんど価値が無いそうだ。
ただ、残りの生命を、その時が来るまで大事に使えと言われた。
命を売ってまで変えたい運命とは何だろう。

小さな道を歩けば、ずっと先まで見えてくる。
思い出すことは記憶の一部だけで、思い出と呼んではいけない。
何もなかったよ。だから終わりもない。
呼ぶ声を聞くのは自分だけなんだ。
繰り返す言葉は意味が薄れ、忘れてしまう。
ずっと考えていたのに、いくら探しても見つからない。

ゴロー太は、急がない。
ゆっくりと歩く。なるようになるさ。

拒み続ける橋は、まだ夢から覚めない。
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