第43話 祈り続けたこと

文字数 305文字

ゴロー太は祈る。思い続けたことを祈る。
その木がずっと、そこに在るように、
ゴロー太よりずっと、長生きしているから。
ゴロー太が生まれるずっと前から、その木は生きている。
何でも知っている。
ゴロー太は思い続ける。
きっと何かを教えてくれるんじゃないか。
そう、思い続けた。

近くを通るたび見上げた。
暑いときは木陰に入った。
たくさんの木の葉で遊んだ。
冷たい雨を凌ぐのにやって来た。

その木は、雪の重みで倒れた。
ゴロー太は、心がへし折れる感じを受けた。
思い続けたことが、砕けた。

ゴロー太は、昨日を思い出す。
いつまでも、その木は在り続けるはずだった昨日を思い出す。
それは戻らない。

ただ、それだけのことを今日、
ゴロー太は、思い出した。
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