第38話 街の入り口の永い吊り橋

文字数 409文字

揺れている。微かに揺れている。
遙か遠くに街が見える。
この橋を渡らないと入れない。
ゴロー太は、躊躇する。
高いところは平気だ。だけど揺れている。

ゴロー太は、走る。
その先に、求めていることがあるのなら、
あるかもしれないなら、走るしかない。
風で飛ばされそうになっても、
この橋が、その先につながっているのなら、
考えることはない。
恐れることもない。

永い橋は、ゴロー太を拒み続ける。
いくら走っても先は見えない。
無言のまま、ずっと、在り続ける。
ゴロー太の想いは、橋と同じように揺れる。
そうかもしれない。
違うかもしれない。
何も確かなものは無い。
ただ、信じたいことだけだ。
ただ、信じたことは、
自分だけだったかもしれない。

この橋は渡るべきじゃない。
この橋は、作り上げた道。
あるはずも無い街への架け橋。
ゴロー太は、引き返す。
初めて気が付く。この道は違う。
間違った道をいつまで走っても届かない。
初めて、わかる。
ゴロー太は、引き返す。

これでいい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み