06 テクノロジー談義とガールズトーク

文字数 2,054文字

 完全に機能を停止していることを確認した後でサスケを中心に鎧を剥ぎ取ると、中には彼らが思っていた通り制御機械が詰まっていた。

「ざっと見た感じですが、知らないパーツが多いですね」

 ゼンが再起動しないようにいくつかのパーツを抜き取り配線を切断した後で念入りに調べ始めると、クロがこの部屋での休息を提案した。

「スフィンクスの部屋と違い扉が自動で開いたり部屋の中に危険な状態の敵もいませんからね。何より時間が遅い。おそらく今は夜の八時半過ぎといったところです」

 各パーツを光にかざし角度を変えながらゼンが賛意を示す。

「じゃあ、見張りの順番を決めよう」

「見張り?」

 シュウトがジュリーを睨む。

「ああ、ここは敵地のど真ん中だ。何が起こるか判らないからな」

「そうだな。九人いることだし、三時間三交代……」

 そう言いかけたクロをゼンが遮る。
 相変わらず視線はロボットのパーツからは離さない。

「いえ、二時間四交代で行きましょう」

「なぜ?」

 コーが問いかける。

「トータルの睡眠時間をそのままに一人当たりの負担を減らすためです」

「なるほど」

「じゃあ、最初の見張りは……」

「我々にしてください。このままこのロボットを調べたいので」

「判った。二番目以降は……そうだな、ヒビキとレイナ、コーとロム、最後にオレとシュウトの順だ」

 見張りの順番が決まると、彼らはそれぞれ場所を確保して休息をとる。
 硬い床ではあったがマントに(くる)まり横になると、これまでの緊張と何度も繰り返された戦闘による疲労からだろう眠気が一気に彼らを深い眠りの底へ引き込んだ。

「本当に見たことのないパーツばかりだな」

「ええ。どれも市場に流通している一般的なパーツより数段性能が良さそうなんですよね」

 サスケに索敵を丸投げして、ゼンとジュリーはパーツの精査に没頭した。
やがて

「これは見たことがあるぞ」

 と、ジュリーが指差したパーツをゼンは慎重に基盤から取り外す。

「これは?」

「姿勢制御用のパーツで某国の軍事用人型ロボットに使われていたものだ。某国はこの第三世代モデルを利用しているって話だが……」

「ということはこれは初期型?」

「ああ、正式採用された第一世代だ」

「なぜそんなものが? というか、そもそもどうしてあなたがこのパーツの存在を知っているんですか?」

 醒めた視線を送るゼンに対して、彼はいつにも増して芝居臭い言い回しでこう答える。

「理系学部は伊達じゃないのさ」

「理系学部とかいうレベルの機密ではありませんよね?」

「そうだな」

 それまで会話に入ってこなかったサスケがしびれを切らしたのかこう割り込んできた。

「はっきり答えたらどうでござる? 非合法な手段なのでござろう?」

「レイナの行方を捜す過程で色々ハッキングしてたら見つけたのさ」

「よく無事でしたね」

「敵対スパイが掴んだ情報だったっぽくてな」

「あの国ですか? 最近新型自立型人型兵器(ロボット)の配備計画を発表した」

 ゼンの問いにジュリーは妖しい笑みを浮かべることで答える。

「それはそれは……」

 一通り調べた結果とその軍事用パーツとの兼ね合いから、彼らは某国の軍事技術を基に作られたロボットであることは間違いないという結論に至った。

「ゲーム用に制御されていただろうプログラムと停止装置が仕込まれていなければ、我々に勝ち目があったかどうか……」

 背筋に寒いものを感じながら、ゼンは新しい油をランタンに補充する。
 サスケがヒビキをジュリーがレイナを起こして見張りの交代を告げると、彼女たちは眠い目をこすりながら起き上がった。

「今ランタン(オイル)を入れ替えたところです。これが……」

 と、予備の一本を取り出しレイナに渡す。

「なくなる頃に交代です」

「判った。おやすみなさい」

 レイナたちに声をかけられた三人は一気に眠気に襲われて、寝支度もそこそこに倒れこむように眠りについた。
 しばしの静寂が部屋を包む。
 やがてレイナはヒビキに話しかけた。

「ヒビキさんはぶっちゃけコーさんのこと好きですよね?」

 突然()ち込まれた爆弾発言に一気に目が覚めたヒビキは、顔を紅潮させてしどろもどろになる。
 それを面白そうに見ながらレイナはさらに畳み掛ける。

「実際どうなんですか? 二人の仲は。はたから見てるとコーさんもヒビキさんのこと好きそうですけど」

「レ、レイナ!」

「ここに来る前からですか?」

「…………」

 ヒビキは二の句も継げない。

「今日はそこんとこぜひ訊かせてください」

 二人きりの時間はまだたっぷり二時間近くもある。
 ヒビキは観念すると同時に反撃の一撃を放った。

「じゃあ、私が話したらレイナも話してね? 好きなんでしょ? ロムのこと」

 レイナは頬を染めて俯いた。
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