07 初陣
文字数 2,119文字
北門は臨戦態勢に入った。
伝令が戦士を呼びに街へと走る。
残ったメンバーは武器庫から武器を運び出し並べる。
その手際の良さは相当の場数を踏んでいることの証だ。
「オレたちも手伝おう」
「お兄ちゃん!」
「心配すんな。見たろ? 今の戦い」
まだわずかに肩で息をしているジュリーとサスケを見てヒビキはわずかに逡巡するも、四人一組で動くならという条件付きで許可する。
三人は互いに頷き合って自分の武器を手に取る。
ジュリーは腰にショートソードを吊るして日本刀を背負う。
サスケも日本刀を背負って帯の後ろに短刀を挟み込む。
ゼンは杖 を抱えるように持ち、ロムは棍を拾い上げると一度大きく頭上で振り回した。
「ヒビキさん、私もお兄ちゃんたちと一緒でいいですか?」
「ああ、その方がいいかもしれないね」
見張り組の準備が整った頃、シュウトたち六人が北門に現れる。
「相変わらず早いな……」
という誰かのつぶやきを聞き流しつつ、ロムは六人を一瞥しただけで、ヒビキの指示を待つ姿勢をとる。
ゼンもサスケも敢えて彼らを見ないように心掛けたが、ただ一人ジュリーだけがシュウトと視線を交わした。
「なんだ? てめぇ」
シュウトがジュリーに詰め寄ろうとするのをヒビキが間に入って抑える。
「敵は外だ」
短く舌打ちをしたシュウトは仲間を連れ立って北門の前に立つ。
「何体だ?」
「コボルド三十、オーク三十、サイクロプスが三体だ」
見張り塔から降りて来ていた男が答える。
「オレらの邪魔だけはすんなよ」
吐き捨てるようにいうシュウトに自警団のメンバーが殺気立つ。
ゼンには邪魔をするのはむしろ彼らの方、という無言の抗議に思えた。
「早く開けな」
女がイライラと催促するのを開門操作用のハンドル前に立つ男が冷たく拒否した。
「まだ全員到着していない」
女が「来たよ」と顎で指し示す先にクロたちの姿が確認できた。
男は気を取り直すためか、ほぅと息を吐いてからハンドルを回し始めた。
北門が重そうにゆっくりと開き、待ちかねたように六人が飛び出して行く。
それを見届けてからヒビキは先発隊となる昼班を門の外へ進発させた。
「行きましょう」
とレイナに促されてロムたちも後に続く。
続々と到着する自警団の戦士を五人一組に編成していくヒビキは順次彼らを送り出し、クロとコーとともに門の外へ出る。
「サイクロプスが三体だって?」
コーがヒビキに問いかける。
いつもは一体か二体のサイクロプスが今日は三体ということに少し動揺しているようだった。
無理もない。
主力メンバーに怪我が増えた最大の原因が対サイクロプス戦闘だった。戦力としてアテにされている彼らは常にサイクロプスとの戦いを強いられている。
クロやヒビキでさえ一対一では防戦一方の相手であり、主力メンバーが連携してなんとか倒して来た怪物である。
今日はクロとヒビキとコーで一組。
イサミ、ネバル、アリカ、シュートで一組作っているが、もうひと組足りない。
戦力的な観点で言えばもう一組はシュウトたち六人が当たるのが妥当だろう。
しかし、彼らは一度たりともサイクロプスとやろうとはしない。
「先に倒した方がもう一体を倒す。これしかない」
クロはコーに覚悟を求める。
「それしかないのは判ってますよ」
鬨が上がり自警団が突撃を開始する。
各隊統率は取れている。
散開した彼らはいつもの通り無秩序に襲ってくるコボルドを囲むようにして各個撃破していく。
シュウトたちはオークを選んで嬲り殺しているように見える。
「相変わらず反吐がでる」
その戦いぶりに舌打ちするコーをたしなめて、クロは三体のサイクロプスを値踏みする。
それぞれは距離をとっていて連携は見られないのでこちらも各個撃破が可能だろう。
サイズ的には中央の一体が他の二体より一回り大きい。
(さて、どちらを選択するか)
クロは安全策をとって向かって右手の一体に狙いを定める。
イサミ組も同様の判断をしたらしく左手に移動を開始したのが視界の端に映った。
「オレたちはどうしたらいい?」
ジュリーはゼンを振り返る。
隊形としてゼンを中心に前をジュリー、左右をサスケとレイナ、後方にロムという布陣で戦闘区域のはずれに陣取っていた。
「まずコボルドと戦ってみましょう。話によると一番戦闘力が劣っているようですからね」
「じゃあ、手近なあいつから」
と、ジュリーが剣で指し示す一体を目指す。
こちらの接近に気付いたらしいそのコボルドは汚い声で一言吠えると、こちらに向かって突進してきた。
声を聞きつけ周りの三体も後を追う。
「気をつけて」
レイナが言う。
「心配ない」
ジュリーは日本刀を抜き放ち狙った一体を迎え撃つため立ち止まる。
ゼンはそれを見越していたのだろう。
被弾しない距離で歩を止め杖を構えている。
レイナとサスケはジュリーを追い越し後続の三体と先頭の一体の間に入った。
伝令が戦士を呼びに街へと走る。
残ったメンバーは武器庫から武器を運び出し並べる。
その手際の良さは相当の場数を踏んでいることの証だ。
「オレたちも手伝おう」
「お兄ちゃん!」
「心配すんな。見たろ? 今の戦い」
まだわずかに肩で息をしているジュリーとサスケを見てヒビキはわずかに逡巡するも、四人一組で動くならという条件付きで許可する。
三人は互いに頷き合って自分の武器を手に取る。
ジュリーは腰にショートソードを吊るして日本刀を背負う。
サスケも日本刀を背負って帯の後ろに短刀を挟み込む。
ゼンは
「ヒビキさん、私もお兄ちゃんたちと一緒でいいですか?」
「ああ、その方がいいかもしれないね」
見張り組の準備が整った頃、シュウトたち六人が北門に現れる。
「相変わらず早いな……」
という誰かのつぶやきを聞き流しつつ、ロムは六人を一瞥しただけで、ヒビキの指示を待つ姿勢をとる。
ゼンもサスケも敢えて彼らを見ないように心掛けたが、ただ一人ジュリーだけがシュウトと視線を交わした。
「なんだ? てめぇ」
シュウトがジュリーに詰め寄ろうとするのをヒビキが間に入って抑える。
「敵は外だ」
短く舌打ちをしたシュウトは仲間を連れ立って北門の前に立つ。
「何体だ?」
「コボルド三十、オーク三十、サイクロプスが三体だ」
見張り塔から降りて来ていた男が答える。
「オレらの邪魔だけはすんなよ」
吐き捨てるようにいうシュウトに自警団のメンバーが殺気立つ。
ゼンには邪魔をするのはむしろ彼らの方、という無言の抗議に思えた。
「早く開けな」
女がイライラと催促するのを開門操作用のハンドル前に立つ男が冷たく拒否した。
「まだ全員到着していない」
女が「来たよ」と顎で指し示す先にクロたちの姿が確認できた。
男は気を取り直すためか、ほぅと息を吐いてからハンドルを回し始めた。
北門が重そうにゆっくりと開き、待ちかねたように六人が飛び出して行く。
それを見届けてからヒビキは先発隊となる昼班を門の外へ進発させた。
「行きましょう」
とレイナに促されてロムたちも後に続く。
続々と到着する自警団の戦士を五人一組に編成していくヒビキは順次彼らを送り出し、クロとコーとともに門の外へ出る。
「サイクロプスが三体だって?」
コーがヒビキに問いかける。
いつもは一体か二体のサイクロプスが今日は三体ということに少し動揺しているようだった。
無理もない。
主力メンバーに怪我が増えた最大の原因が対サイクロプス戦闘だった。戦力としてアテにされている彼らは常にサイクロプスとの戦いを強いられている。
クロやヒビキでさえ一対一では防戦一方の相手であり、主力メンバーが連携してなんとか倒して来た怪物である。
今日はクロとヒビキとコーで一組。
イサミ、ネバル、アリカ、シュートで一組作っているが、もうひと組足りない。
戦力的な観点で言えばもう一組はシュウトたち六人が当たるのが妥当だろう。
しかし、彼らは一度たりともサイクロプスとやろうとはしない。
「先に倒した方がもう一体を倒す。これしかない」
クロはコーに覚悟を求める。
「それしかないのは判ってますよ」
鬨が上がり自警団が突撃を開始する。
各隊統率は取れている。
散開した彼らはいつもの通り無秩序に襲ってくるコボルドを囲むようにして各個撃破していく。
シュウトたちはオークを選んで嬲り殺しているように見える。
「相変わらず反吐がでる」
その戦いぶりに舌打ちするコーをたしなめて、クロは三体のサイクロプスを値踏みする。
それぞれは距離をとっていて連携は見られないのでこちらも各個撃破が可能だろう。
サイズ的には中央の一体が他の二体より一回り大きい。
(さて、どちらを選択するか)
クロは安全策をとって向かって右手の一体に狙いを定める。
イサミ組も同様の判断をしたらしく左手に移動を開始したのが視界の端に映った。
「オレたちはどうしたらいい?」
ジュリーはゼンを振り返る。
隊形としてゼンを中心に前をジュリー、左右をサスケとレイナ、後方にロムという布陣で戦闘区域のはずれに陣取っていた。
「まずコボルドと戦ってみましょう。話によると一番戦闘力が劣っているようですからね」
「じゃあ、手近なあいつから」
と、ジュリーが剣で指し示す一体を目指す。
こちらの接近に気付いたらしいそのコボルドは汚い声で一言吠えると、こちらに向かって突進してきた。
声を聞きつけ周りの三体も後を追う。
「気をつけて」
レイナが言う。
「心配ない」
ジュリーは日本刀を抜き放ち狙った一体を迎え撃つため立ち止まる。
ゼンはそれを見越していたのだろう。
被弾しない距離で歩を止め杖を構えている。
レイナとサスケはジュリーを追い越し後続の三体と先頭の一体の間に入った。