13 攻めか守りか
文字数 2,463文字
「やはり決意は変わらないか」
その日の夜開かれた会議には多くの参加者がいた。
総勢十二名。
円卓の座席全てに人が座ったのは初めてかもしれないとレイナは記憶を辿っていた。
牡羊座のレリーフがある席に座っている黒川陸斗 から順に牡牛座の席に谷村崇仁 、双子座の席に畑中耕作 、蟹座の席に川上勇 、獅子座の席に浅見洸汰 、乙女座の席に響木涼音 、天秤座の席に珠木玲奈 、蠍座の席に水谷泰 、射手座の席に佐藤航助 、山羊座の席に珠木理 、水瓶座の席に伊達弘武 、魚座には三田善治 が座っている。
ゼンは円卓を囲む参加者をぐるりと見まわしてクロの問いに答える。
「はい。今回の戦闘は重傷者を出さずに勝利しました。これ以上ない戦果だと思われますがいかがでしょうか?」
鼻にかかった節のついた話し方が一段と芝居染みている。
一度区切って辺りを見回すあたり芝居がかっているのは意図的なのだろう。
「我々は攻めに転じなければなりません。我々の目的は、少なくとも
「オレも賛成です。こっちから攻めましょうよ」
「攻めるってのはまた前のめりだな。まずは偵察だろ?」
逸るコーにやっさんが言う。
街の住人にとって北門の外は<
時々まとまった数で怪物が攻めてくると言う以上の情報がない未開の荒野である。
常識に照らして推測出来るのはその先に怪物どもが生み出される「村」のようなものがあるのではないだろうか? と言う程度だ。
行くのなら、どの程度のパーティで何を目的にするかは決める必要がある。
コーは軍団全軍での攻勢くらい主張しそうなほどで主戦論の急先鋒といったところであり、対してやっさんはまず少数精鋭で偵察を行いとにかく今後の方針を決める情報を集めることに徹するべきと言う主張を展開している。
態度を明確にしていないクロ・ハタサク・レイナ・ロム以外は多少主張に差異はあっても積極攻勢か、まずは偵察のいずれかを支持しており、街に籠ると言う主張はない。
「行った先に数百体規模の怪物 農場 的なものがあったら全滅しかねないんだぞ」
と、タニが言えば、
「それはあり得ないと思います。これまでの襲撃は大軍から戦力を小出しに投入して来るのではなく、ある程度戦力がまとまったとなったタイミングで攻めてくるのだと思われます」
と、ゼンが主張する。
「なぜそう思う?」
「一つには医療班が行った怪物研究の資料を読ませてもらったところ、彼らの生殖器官が非常に未発達なことなどから個体が非常に若いことが判明しているからです。もっと言うと年齢…いや月齢というのが適切でしょうか、非常に揃っている」
「つまり、家畜でも出荷するような感じで戦いに送り出しているってことか?」
イサミの問いかけに頷いてみせるゼンは
「二つ目は」と指を二本立ててみせる。
「怪物は間違いなく人が作り出しているからです」
「なるほど、確かに伝説や物語に出てくる怪物ではあっても自然界に存在したと証明されている生き物じゃあないな」
「奇しくもタニさんが怪物 農場 と表現したようなものが……いえ、多分怪物 工場 と言えるようなものが存在している可能性はあっても、我々を迎撃できる規模の戦力が揃っている可能性は低いのではないかと考えています」
「それでも作戦が遅れればここに襲いにくる規模の戦力が出来上がってしまう恐れはあるぜ」
ジュリーという男は不思議な男で、普段は考えなしの熱血漢然とした振る舞いなのにここという時には非常に冷静で鋭い発言をする。
「拙者も行くなら今日にでもという考えを支持するでござる」
「今のところ誰も行くことに反対はしてねぇがな?」
やっさんは頭をガシガシと掻きながらクロを見やる。
「問題は何を目的に何人出すかだろ」
「だから全軍で……」
「考えなし」
「なんだとスズネ」
「全軍出してもし別ルートから襲撃されたなんてことになったらどうすんのさ」
「そんなことあると思うか?」
「危機管理は大事だぞ」
「南門から人造人間 が襲ってくるなんて可能性も0 じゃあねぇな」
とタニとやっさんに言われるとぐうの音も出ない。
「じゃあ誰が行く?」
「まてまてって、まだ目的を決めてないんだから何人必要か判らないだろうよ」
「目的は探険。人数は我々四人で構いません」
ゼンが力強く宣言するとレイナとコーが続く。
「私もお兄ちゃんたちと行く」
「オレも混ぜろ」
「それはいくら何でも少なすぎる」
と、タニが言えば、
「主だった戦力みんな行ったら街の防衛はどうするつもりなんだ?」
と、ハタサクが問う。
そこから喧々諤々の議論が始まった。
議論の争点は大きく二つ。
一つはどれほどの戦力を投入するのか。
そして、誰を残すかである。
まず全体の指揮をとるやっさんと、自分は行く気がないと態度を明確にしたイサミが早々に居残り組と決まった。
ここにいる自警団組はいいが集まっていないメンバーは選抜するのかといったことも議題に上がるが、街全体がどう反応するか? 動揺しないかといった心配も話し合われる。
「対サイクロプスメンバーを最低ひと組み残してくれなきゃ怖くて指揮なんか取れないぞ」
「イサミがいるしネバルにアリカ、シュートもいるだろ?」
「彼らがついて行くといったらどうすんだ?」
「決定事項だって言えばいいんじゃないの?」
「それで納得するかぁ?」
「もう一人のシュウトはどうするんだ?」
ハタサクがボソリと呟いた。
重い沈黙が部屋を支配する。
その日の夜開かれた会議には多くの参加者がいた。
総勢十二名。
円卓の座席全てに人が座ったのは初めてかもしれないとレイナは記憶を辿っていた。
牡羊座のレリーフがある席に座っている
ゼンは円卓を囲む参加者をぐるりと見まわしてクロの問いに答える。
「はい。今回の戦闘は重傷者を出さずに勝利しました。これ以上ない戦果だと思われますがいかがでしょうか?」
鼻にかかった節のついた話し方が一段と芝居染みている。
一度区切って辺りを見回すあたり芝居がかっているのは意図的なのだろう。
「我々は攻めに転じなければなりません。我々の目的は、少なくとも
私たち
の目的は元の世界に戻ることにあるのです。街に籠っていては望みは叶えられません」「オレも賛成です。こっちから攻めましょうよ」
「攻めるってのはまた前のめりだな。まずは偵察だろ?」
逸るコーにやっさんが言う。
街の住人にとって北門の外は<
時々まとまった数で怪物が攻めてくると言う以上の情報がない未開の荒野である。
常識に照らして推測出来るのはその先に怪物どもが生み出される「村」のようなものがあるのではないだろうか? と言う程度だ。
行くのなら、どの程度のパーティで何を目的にするかは決める必要がある。
コーは軍団全軍での攻勢くらい主張しそうなほどで主戦論の急先鋒といったところであり、対してやっさんはまず少数精鋭で偵察を行いとにかく今後の方針を決める情報を集めることに徹するべきと言う主張を展開している。
態度を明確にしていないクロ・ハタサク・レイナ・ロム以外は多少主張に差異はあっても積極攻勢か、まずは偵察のいずれかを支持しており、街に籠ると言う主張はない。
「行った先に数百体規模の
と、タニが言えば、
「それはあり得ないと思います。これまでの襲撃は大軍から戦力を小出しに投入して来るのではなく、ある程度戦力がまとまったとなったタイミングで攻めてくるのだと思われます」
と、ゼンが主張する。
「なぜそう思う?」
「一つには医療班が行った怪物研究の資料を読ませてもらったところ、彼らの生殖器官が非常に未発達なことなどから個体が非常に若いことが判明しているからです。もっと言うと年齢…いや月齢というのが適切でしょうか、非常に揃っている」
「つまり、家畜でも出荷するような感じで戦いに送り出しているってことか?」
イサミの問いかけに頷いてみせるゼンは
「二つ目は」と指を二本立ててみせる。
「怪物は間違いなく人が作り出しているからです」
「なるほど、確かに伝説や物語に出てくる怪物ではあっても自然界に存在したと証明されている生き物じゃあないな」
「奇しくもタニさんが
「それでも作戦が遅れればここに襲いにくる規模の戦力が出来上がってしまう恐れはあるぜ」
ジュリーという男は不思議な男で、普段は考えなしの熱血漢然とした振る舞いなのにここという時には非常に冷静で鋭い発言をする。
「拙者も行くなら今日にでもという考えを支持するでござる」
「今のところ誰も行くことに反対はしてねぇがな?」
やっさんは頭をガシガシと掻きながらクロを見やる。
「問題は何を目的に何人出すかだろ」
「だから全軍で……」
「考えなし」
「なんだとスズネ」
「全軍出してもし別ルートから襲撃されたなんてことになったらどうすんのさ」
「そんなことあると思うか?」
「危機管理は大事だぞ」
「南門から
とタニとやっさんに言われるとぐうの音も出ない。
「じゃあ誰が行く?」
「まてまてって、まだ目的を決めてないんだから何人必要か判らないだろうよ」
「目的は探険。人数は我々四人で構いません」
ゼンが力強く宣言するとレイナとコーが続く。
「私もお兄ちゃんたちと行く」
「オレも混ぜろ」
「それはいくら何でも少なすぎる」
と、タニが言えば、
「主だった戦力みんな行ったら街の防衛はどうするつもりなんだ?」
と、ハタサクが問う。
そこから喧々諤々の議論が始まった。
議論の争点は大きく二つ。
一つはどれほどの戦力を投入するのか。
そして、誰を残すかである。
まず全体の指揮をとるやっさんと、自分は行く気がないと態度を明確にしたイサミが早々に居残り組と決まった。
ここにいる自警団組はいいが集まっていないメンバーは選抜するのかといったことも議題に上がるが、街全体がどう反応するか? 動揺しないかといった心配も話し合われる。
「対サイクロプスメンバーを最低ひと組み残してくれなきゃ怖くて指揮なんか取れないぞ」
「イサミがいるしネバルにアリカ、シュートもいるだろ?」
「彼らがついて行くといったらどうすんだ?」
「決定事項だって言えばいいんじゃないの?」
「それで納得するかぁ?」
「もう一人のシュウトはどうするんだ?」
ハタサクがボソリと呟いた。
重い沈黙が部屋を支配する。