06 MIN-03β
文字数 2,467文字
手入れされていない風に生い茂る木の中に目立たないように建てられた小さな小屋。
師匠が探ったところによれば、中は殺風景で監視小屋とも言いがたくとても人が超時間を過ごせる感じではない。
にも関わらず一度入った男たちが一晩二晩過ごして帰るのだと言う。
男たちは雪解けで湿った枯れ草の上を滑るように移動して小屋に辿り着くと、中の様子を確認する。
師匠と蒼龍騎から前日、男たちが七人中に入ってまだ出てきていないことを確認しているが、中にはやはり誰もいる様子がない。
「チャーリーからアルファチームへ。これから小屋へ入る。フェーズ2で待機」
『了解』
施錠の確認をした日下部は小さな秘密道具を取り出し鍵穴に差し込む。
数秒後、その道具からビープ音が小さく鳴ったと思うと、扉が開く。
「何をやったんですか?」
そう聞く蒼龍騎に日下部は事もなげに言う。
「鍵を開けたのさ」
中へ入ると五人は六畳もないその空間を見回す。
「あるとすれば地下へ行ける入り口」
「隠し 扉 ですね」
「チャーリーからアルファチームへ。小屋に入ったが、通信状況はどうか?」
『クリアです』
「では小屋まで移動せよ」
『了解』
「あったぞ」
日下部がアルファチームと連絡を取っている間に蒼龍騎と師匠がそれぞれ隠し扉とその開閉スイッチを見つけていた。
「流石にRPGオタクだな」
と、店長に褒められた蒼龍騎は照れて頭を掻く。
充がスイッチを入れると静かに扉がスライドして階段が現れる。
師匠を先頭に充、蒼龍騎、店長、日下部と階段を降りて行く。
階段を降り切るとアルファチームから連絡が入る。
『アルファチームよりチャーリーへ。小屋の前に到着』
「一応、小屋と周辺を調べてからブラボーへフェーズ3に移行するよう指示を出せ。以降連絡は禁止。各自の判断で行動せよ」
『了解』
地下通路は照明に照らされ、先が見える。
しばらく進んで左に曲がると、正面に扉が見えた。
師匠と充が先行して扉に近づく。
電子ロックで施錠された扉には小さな覗き窓がついている。
充が覗くと中は研究施設のようになっていて全体を見渡すことができない。
見える範囲にはいくつものモニタと操作端末があり、三人の男たちが利用している。
モニタには数値などが表示されているものと、監視カメラの映像のらしきものを映しているものとがあり、カメラ映像にはファンタジー映画にでも出てきそうな城門が映っていた。
それを確認したところで二人は音もなく曲がり角の、三人が待っているところまで戻ってくる。
報告を受け、五人はそれぞれの役割を確認して突入の準備に入る。
静かに扉に近づくと日下部が例の秘密道具を取り出して電子ロックの解除を行う。
ロック解除の電子音が鳴ると同時に充がドアを蹴り開けると、師匠とともに部屋の奥へ進む。
店長が操作端末に駆け寄り、蒼龍騎がそのサポートに回る間に充と師匠が三人を取り押さえる。
日下部は四人を信用しているのか悠然と部屋の中を見回すと、部屋の奥に六台のミクロンシステムがあり、うち三台が稼働中であることを示すランプがついていた。
その側には四人目の男がおり、突然のことで驚いた表情のまま茫然と立ち尽くしていた。
男は日下部と目があったことでいくらか自分を取り戻したのか、さっと行動を開始する。
「チッ」
何をしたのかは判らない。
しかし、何かの緊急事態を想定した行動であることは日下部にも理解できた。
日下部は素早く腰のホルスターから拳銃を抜き撃ちすると男の右腕にヒットする。
「日下部!」
店長がその名を叫ぶ。
「殺してない」
「そう言う問題じゃないだろ!」
憤る店長を悠然と無視して腕を抑える男のそばへ行くと何をしていたかを確認し、表情を変えた。
「何が出てくる!」
その鋭い物言いに店長たちが日下部を見る。
血相が変わっている。
「ふふふ……ははははは……」
男は気が触れたように笑い出し、狂気の表情で日下部を見た。
「もう遅い。そんな銃一つで勝てるかな? ひゃははははは」
「チッ! 上杉、何が出る!」
声をかけられた店長は手元の端末を操作して情報を探す。
蒼龍騎も手伝おうとモニタを見上げると、そこにはちょうど囚われた冒険者の街の南門に殺到する十体以上の人造人間 が映っていた。
別のモニタには、北門に向かって放たれたサイクロプス一体とコボルド、オークの軍団が、こちらは合わせて二十体以上だろう。
映画のワンシーンのような映像に事態が飲み込めなかったものの、その映像が現実のものだと言うことだけは理解できた。
「やばいんじゃないですか、店長」
指差すモニタを一瞥した店長は、すぐに手元に視線を戻し作業を続ける。
「あれもやばいがこっちもやばそうだ」
「どう言うことじゃ?」
充とともに三人の男たちを拘束した師匠がやってくる。
「あの男が何かをミクロンシステムに突っ込んだんです」
と、日下部に掴まれている男を見る。
ロムから大雑把には教えられている師匠は六台のうち元々稼働していた三台とは別に稼働ランプが点灯した端のシステムを見やる。
「怪物か?」
「ええ、多分。何が出てくるのかは判りませんが、コードネームは……MIN・03β 」
蒼龍騎がカメラを切り替える操作を覚えたようで、モニタの映像が次々と切り替わる。
そこには北門の内側で指示を出す勇 や、南門に集まる戦士に指示を飛ばすやっさんが映る。
「あ」
そしてついに、ロムたちを映すカメラを見つけた。
カメラには人型の牛二体と戦う八人の冒険者が映っていた。
そして、人型の牛には「MIN・03α 」「MIN・03Γ 」と識別コードが表示されている。
「店長!」
師匠が探ったところによれば、中は殺風景で監視小屋とも言いがたくとても人が超時間を過ごせる感じではない。
にも関わらず一度入った男たちが一晩二晩過ごして帰るのだと言う。
男たちは雪解けで湿った枯れ草の上を滑るように移動して小屋に辿り着くと、中の様子を確認する。
師匠と蒼龍騎から前日、男たちが七人中に入ってまだ出てきていないことを確認しているが、中にはやはり誰もいる様子がない。
「チャーリーからアルファチームへ。これから小屋へ入る。フェーズ2で待機」
『了解』
施錠の確認をした日下部は小さな秘密道具を取り出し鍵穴に差し込む。
数秒後、その道具からビープ音が小さく鳴ったと思うと、扉が開く。
「何をやったんですか?」
そう聞く蒼龍騎に日下部は事もなげに言う。
「鍵を開けたのさ」
中へ入ると五人は六畳もないその空間を見回す。
「あるとすれば地下へ行ける入り口」
「
「チャーリーからアルファチームへ。小屋に入ったが、通信状況はどうか?」
『クリアです』
「では小屋まで移動せよ」
『了解』
「あったぞ」
日下部がアルファチームと連絡を取っている間に蒼龍騎と師匠がそれぞれ隠し扉とその開閉スイッチを見つけていた。
「流石にRPGオタクだな」
と、店長に褒められた蒼龍騎は照れて頭を掻く。
充がスイッチを入れると静かに扉がスライドして階段が現れる。
師匠を先頭に充、蒼龍騎、店長、日下部と階段を降りて行く。
階段を降り切るとアルファチームから連絡が入る。
『アルファチームよりチャーリーへ。小屋の前に到着』
「一応、小屋と周辺を調べてからブラボーへフェーズ3に移行するよう指示を出せ。以降連絡は禁止。各自の判断で行動せよ」
『了解』
地下通路は照明に照らされ、先が見える。
しばらく進んで左に曲がると、正面に扉が見えた。
師匠と充が先行して扉に近づく。
電子ロックで施錠された扉には小さな覗き窓がついている。
充が覗くと中は研究施設のようになっていて全体を見渡すことができない。
見える範囲にはいくつものモニタと操作端末があり、三人の男たちが利用している。
モニタには数値などが表示されているものと、監視カメラの映像のらしきものを映しているものとがあり、カメラ映像にはファンタジー映画にでも出てきそうな城門が映っていた。
それを確認したところで二人は音もなく曲がり角の、三人が待っているところまで戻ってくる。
報告を受け、五人はそれぞれの役割を確認して突入の準備に入る。
静かに扉に近づくと日下部が例の秘密道具を取り出して電子ロックの解除を行う。
ロック解除の電子音が鳴ると同時に充がドアを蹴り開けると、師匠とともに部屋の奥へ進む。
店長が操作端末に駆け寄り、蒼龍騎がそのサポートに回る間に充と師匠が三人を取り押さえる。
日下部は四人を信用しているのか悠然と部屋の中を見回すと、部屋の奥に六台のミクロンシステムがあり、うち三台が稼働中であることを示すランプがついていた。
その側には四人目の男がおり、突然のことで驚いた表情のまま茫然と立ち尽くしていた。
男は日下部と目があったことでいくらか自分を取り戻したのか、さっと行動を開始する。
「チッ」
何をしたのかは判らない。
しかし、何かの緊急事態を想定した行動であることは日下部にも理解できた。
日下部は素早く腰のホルスターから拳銃を抜き撃ちすると男の右腕にヒットする。
「日下部!」
店長がその名を叫ぶ。
「殺してない」
「そう言う問題じゃないだろ!」
憤る店長を悠然と無視して腕を抑える男のそばへ行くと何をしていたかを確認し、表情を変えた。
「何が出てくる!」
その鋭い物言いに店長たちが日下部を見る。
血相が変わっている。
「ふふふ……ははははは……」
男は気が触れたように笑い出し、狂気の表情で日下部を見た。
「もう遅い。そんな銃一つで勝てるかな? ひゃははははは」
「チッ! 上杉、何が出る!」
声をかけられた店長は手元の端末を操作して情報を探す。
蒼龍騎も手伝おうとモニタを見上げると、そこにはちょうど囚われた冒険者の街の南門に殺到する十体以上の
別のモニタには、北門に向かって放たれたサイクロプス一体とコボルド、オークの軍団が、こちらは合わせて二十体以上だろう。
映画のワンシーンのような映像に事態が飲み込めなかったものの、その映像が現実のものだと言うことだけは理解できた。
「やばいんじゃないですか、店長」
指差すモニタを一瞥した店長は、すぐに手元に視線を戻し作業を続ける。
「あれもやばいがこっちもやばそうだ」
「どう言うことじゃ?」
充とともに三人の男たちを拘束した師匠がやってくる。
「あの男が何かをミクロンシステムに突っ込んだんです」
と、日下部に掴まれている男を見る。
ロムから大雑把には教えられている師匠は六台のうち元々稼働していた三台とは別に稼働ランプが点灯した端のシステムを見やる。
「怪物か?」
「ええ、多分。何が出てくるのかは判りませんが、コードネームは……MIN・03
蒼龍騎がカメラを切り替える操作を覚えたようで、モニタの映像が次々と切り替わる。
そこには北門の内側で指示を出す
「あ」
そしてついに、ロムたちを映すカメラを見つけた。
カメラには人型の牛二体と戦う八人の冒険者が映っていた。
そして、人型の牛には「MIN・03
「店長!」