九章・通りゃんせ(1)

文字数 6,597文字

「スズラン!」
 モミジの中から飛び出すオトギリ。魔素を操り形作った“見えない腕”でユカリの影の手が私の首に届く寸前、弾き返す。さらに彼女は素早く反撃に転じようとした。

 なのに、突然“見えない腕”が霧散する。

「なっ!?
「オトギリ!」
 邪魔者から片付けようと彼女に迫る影。今度は私が魔力糸を伸ばし彼女を引き戻す。
 私達は一旦距離を取ろうと並んでモミジの周囲を飛び回った。ユカリの影は追いかけて来る。飛行速度は完全に互角。引き離せないし追いつけない。
「情報神の力……話には聞いていたけれど、魔素の操作まで無効化されるなんて……!?
 ショックを受けるオトギリ。彼女達の魔素を操る術も結局は魔法の一種。だからあの影には通じない。
 でも、だからといって長々落ち込んでいる暇は無い。気を取り直して並走する私に対し問いかける。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ……なん、とか」
 頭はフラついてますが、今は魔力障壁が皆の生命線。障壁が解除されればたちまち毒化した魔素の餌食になってしまう。その事実が辛うじて意識を繋ぎ止めてくれました。

『……』

 モミジを引き倒したリュウトの影が、そんな私達に左手を向ける。すると周囲の魔素の霧が凝集してワイバーンもどき達が次々生み出された。
「倒しても倒しても湧いてくると思ったら……!!
「それなら!」
 今度はナスベリさんが外へ出て巧みなホウキさばきで飛び回り、攻撃を避けつつ怪物の一匹に触れる。
 そして記憶凍結魔法を使った。

「凍れ!」

 ──でもワイバーンもどきは凍りません。それどころか彼女の肉を喰い千切ろうと大口を開けて反撃してきました。
「ちょっ、こいつら記憶災害じゃないの!?
 慌てて回避する彼女。ようやくダメージの抜けて来た私は叫ぶ。
「違います! 同じ魔素から生み出された存在でも、これらは“再現”でなく本物の生物なんです! それが≪生命≫を司る彼の力!!

 生命神リュウトは命を生み出し、自在に奪う。ナデシコさんの“生物の在り方を歪める力”と同じで変異や進化をもたらすことも可能。
 でも魔素を触媒に使ったところを見ると、あの影はオリジナルのように無から有を生み出すほどの力は持ってなさそう。一向に使って来ないので命を奪い取る力も再現されてはいないのでしょう。今はまだ、ですが。

「とりあえず、そこから離れなさい!」
 あんなものがモミジの傍にいてはたまらない。魔力弾でリュウトの影を牽制し引き離す。そこへ六人の魔素使いが一斉に攻撃を仕掛けました。たしかに彼になら魔素を使った攻撃は有効。
 見えない腕に引き裂かれ再生を始める影。ワイバーンもどき達の相手もしつつ、さらに彼への攻撃も繰り返す六人。決死の覚悟で挑んでいる分、深度が深い。倒すまではいかずとも足止めには十分。
「この木には、もう近付けさせん!」
「こいつと怪物共は我々にお任せ下さい!!
「お願いします!」
 彼等ではきっと勝てない。でもこちらはこちらで最大の脅威と相対している。私は空中で反転し、オトギリ、ナスベリさんと共に情報神の影に立ち向かって行く。

 魔法が全く通じない敵に、こちらは魔女が三人。どう戦う?

「こいつはどうだ!!
 鉄蜂を抜くナスベリさん。間合いを保ちつつ宝石弾を放つ。
(そうか!)
 あれは火薬を使って発射される弾丸。魔法無効化では止められない。案の定ユカリの影の顔に風穴が空いた。
 とはいえ影は影。視覚に頼って動いているわけではないようです。その状態でも彼女の攻撃に対し的確に反撃して来ました。かつてゲッケイがそうしたように複数の術を多方向から時間差をつけて放つ。
「させない!」
 障壁は解除されるかもしれない。そう思った私は魔力糸でワイバーンもどきを一匹捕え、振り回して相手の術をことごとく撃墜。さらにその勢いのまま投げつけてやります。魔法でなく実体を用いた攻撃なら有効だとナスベリさんのおかげで確認出来ました。
 けれど飛んで来た怪物を無造作に蹴り飛ばす影。前回の戦いでもそうでしたがこの影は近接戦闘も強い。ゆえに隙が無い。

 ──無いなら作ればいい。蹴り飛ばされた怪物の背後から次の瞬間ナスベリさんが姿を現す。私の攻撃をカモフラージュに使い、一気に間合いを詰めたのです。
 反応が遅れるユカリの影。その頭部に右手の平が触れた。

「凍れ!」
 すかさず術を発動。この影達は始原七柱の絶望を再現した“記憶災害”の一種。ならばやはり記憶凍結魔法が有効──そのはずだった。
 なのに次の瞬間、彼女は慌てて腕を引っ込め距離を取る。
「うああああっ!?
「ナスベリさん!?
 混乱する彼女に容赦無く襲いかかる敵。バックアップのため追いかけていたオトギリが危ういタイミングで救出し、こちらへ戻って来る。私はさらに数匹のワイバーンもどきを投げつけて彼女達の離脱を支援。
 なんとか戻って来てくれたナスベリさんは、しかし明らかに様子がおかしい。
「う、ああ、あ……ぐ、うう」
「何が起きたんですか!?
「ナスベリさん!」
「あ、あれは無理……記憶が、一気に……」
 頭が痛むのか顔をしかめ、涙と鼻水を垂らしつつあえぐ彼女。記憶凍結魔法の仕組みを詳しく教えてもらったことはありませんが、特定の記憶だけ凍らせるということは発動の瞬間に相手の記憶をある程度参照しているのでしょう。
(そうか、だからだ)
 そのせいで情報神の膨大な記憶が彼女の中に流れ込んでしまったのです。到底人の脳で受け止め切れる代物では無い。聖域でウィンゲイトの記憶に触れてしまった私と同じ。
「だ、大丈夫なんですか?」
「すぐに、術を中断した……でも、しばらく、きつい」
 本当に大丈夫でしょうか? 心配ですが、同時に私は気が付きました。何故かユカリの影の動きが鈍い。足を止め、あちらもまた頭を抱えている。
「ナスベリの攻撃が効いた……?」
「未知の術だから解析が遅れたようですね」
 彼女の魔法無効化も完璧に再現されてはいない。付け入る隙はある。私はこのチャンスに賭けることにしました。オトギリにナスベリさんを託します。
「今から攻撃します。そしたらすぐに二人でモミジの中へ戻って。他の皆さんにも指示を。さっきと同じ、皆が戻り次第、全速力でこの場から離脱します」
「攻撃したらって……どうするつもり? あれに魔法は──」
「効く術を使うまでです!!
 そう、私には唯一無二の魔法がある。これならユカリの影にも通用するはず。

「ソルク・ラサ!!

 突き出した右腕から瞬時に膨大な魔力が放出され、青い光の柱を出現させた。いつものような天地を貫く形でなく今回は横向きに。聖域の方角へ向けて。この角度ならアイビー社長の結界には当たってないはず。
「これが例の魔法!?
「早く行って!」
「わかりました! 貴方達、あの木の中へ!」
 ナスベリさんを抱えつつモミジの方へ飛び、他の皆も呼び戻すオトギリ。魔素使い六人の攻撃が止まった途端、急速に再生を進めるリュウトの影。復活されてしまう前に加速を始める私。
(今度は、このまま聖域まで行く!)
 村の皆には酷な話ですが、なんとか耐えてもらうしかありません。オトギリ達の補助があれば多分大丈夫。
 ソルク・ラサの光の柱はしばらく残る。つまり進路の安全も確保済み。再びモミジに糸を絡めた私は、そのまま光の中へ──

 けれど、

「なっ!? あぐっ!」
 一足先にユカリの影が飛び出して来て私の首を掴んだ。
『マリアァ!!
 怒りのまま締め上げる影。まずい、このままじゃ障壁を維持できない。意識が遠ざかり、同時に絶望感が湧き上がる。

 ソルク・ラサまで“解析”された。

 最大の武器を失い、加速が止まり、動きを封じられた。障壁の中にリュウトの影が侵入して来たため迎撃に出る魔素使い達。でも彼等にも動揺が走っている。
「スズラン様の魔法が通じなかった……!!
「勝てるの!? こんな化け物にっ」
 弱気になった彼等には確信が足りない。さっきまでのようなダメージは入れられず攻撃は大半が素通り。逆にリュウトの影の攻撃は一方的に彼等を疲弊させていく。
「スズラン!」
 オトギリは一人、私の方へ助けに向かう。その時、私の頭には掴まれた部分から何かが侵入し始めていた。


『もう、それしかないでしょ!』

『見捨てるの? あの子達を、自分の子供を!』

『マリア、どうして? なんでアタシ達を置いて──』


「あ……ああ……っ!?
 ナスベリさんの身に起こったのと同じことが起きている。私の中に目の前の影の記憶と感情が流れ込んで来る。無理矢理流し込まれる。
 このままじゃ──

「スズちゃんを放せ!!
「このっ!!

 ──援軍は、意外な形でやって来た。

『バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
『キヒッ! キヒャハハハハハハハハハハハッ!』
!?
 突然、別の影達が襲いかかって来た。偶然か必然か、騎士のような影の一撃でユカリの影の腕が切断され自由を取り戻す私。
「ッハァ!」
 咳き込みそうになるのを堪え高圧の魔力噴射で距離を取った。何かが気に入らないのか、突然現れた新たな影達は大半がユカリの方へ向かって行く。
 一体だけこっちに来た影を魔力弾で吹き飛ばす私。さっき声がした方を見れば、モミジの窓から身を乗り出し無数の宝飾品を投げつけるアサガオちゃんの姿があった。
(あれ、私のコレクション!?
 ヒメツル時代に集めていた無数の呪物。それらが空中に放り投げられると同時、魔素と反応して内包する“呪い”を実体化させた。
「な、なにこれ? やばくない!?
 空中で人型の影と化した宝石を見て、まだ手元にあるそれらに恐怖する彼女。
 その横から顔を出しているメカコ、つまりモミジが別の宝石を投げながら言う。
「全部投げて下さい。お叱りは私が受けます」
「よくわかんないけど、こんな危ないもの置いとく方が悪いのよ!!

 目尻を吊り上げ残りの呪物をいっぺんに放り投げる彼女。さらに多くの呪いが実体化を果たし、手当たり次第に周囲の者達へ襲いかかる。モミジが慌てて窓を閉じたことにより、その標的は外の私達へ絞られた。

「な、なんだなんだ!?
「新しい敵かよ!?
!?
 第三勢力にかき乱され混乱する戦場。情報神と生命神の影までも群がって来るそれらに気を取られた。
「よく……やったわ、モミジ!」
 頭が痛む。吐き気もする。それでも私は自分の障壁を拡張して二柱の影ごと実体化した呪い達を取り込むと、そのまま、まだ消えていない光の柱へ突っ込んだ。

『ッ!!

 ソルク・ラサの光に分解されるリュウトの影。実体化した呪いも消え去り、核となった宝飾品が落ちて行く。追って来たワイバーンもどきの群れも光の柱に飛び込んで自滅した。残すはユカリの影だけ。この一体さえ倒せれば終わる。
「ノコンさん! 剣を貸して下さい!」
「わかった、受け取れ!」
 投擲されたそれを魔力糸で掴み取り、両手で握る。剣術の心得はありません。でも私はクルクマが短剣一本でこの影を倒した光景を見ている。
 六柱の影を倒すのに必要なのは大きな力でも優れた技でもない。確信。ただ師匠(しんゆう)と同じことをすればいい。

 信じて、振り抜け!

「ハアッ!!
 魔力を噴射して一気に距離を詰める。さらに魔力噴射を重ね、前に進むベクトルに絶妙な修正を加えつつ剣を振り下ろす。
 鋼の刃がユカリの影を袈裟斬りにした。消滅はしない。でも効いてはいる。その証拠に再生が遅い。
 刹那、垣間見た記憶が蘇る。先祖マリア・ウィンゲイトの双子の姉。この世界の創造主に最も近しかった存在。そんな彼女の絶望と苦悩を思い出す。
 それでも──
「私達は、貴女を倒して前に進む!」
 逆方向から振り抜いた刃が、ユカリ・ウィンゲイトの影を横一文字に断ち切った。



『マリアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
「く……!?
 上半身と右腕だけになって、なおユカリの影は襲いかかって来た。これでもまだ倒れてくれない!?
 その手をどうにか剣で受けた私は、押し込まれ、モミジの幹に背中から叩き付けられてしまう。
「スズちゃん!」
 窓から顔を出すクロマツさん。
「だい……じょうぶ!」
 有効な攻撃方法はわかった。
 何度か攻撃すれば倒せる。
「私がやります!」
 別の剣を借りて飛び出して来るオトギリ。そう、何も自分一人でやる必要は無いのです。私には仲間が──

 でも突然、魔力障壁が消滅した。私のものだけでなく全員のそれが。
 ユカリの影が解析して強制的に無力化した。

「あああああああああああああああああああああああああああああっ!?
 光の柱まで最悪のタイミングで消え去り、再び充満した魔素が障壁を失った私達へ襲いかかる。それは細胞の一つ一つに侵入して破壊していく。
「な、なんじゃこれは!?
「痛い! 痛いっ!?
 ココノ村の皆も悲鳴を上げ始めた。オトギリも白目を剥いて気絶し、制御を失った自分のホウキと共にモミジの枝に引っかかる。
(ま、ずい……!!
 激痛に苛まれながら思い出す。ナナカさんが見せてくれたグズグズになった肉片。このままだと全員があんな姿になってしまう。どうにかして障壁を再展開しなければ。
 当然、敵はそれを許さなかった。

『マリ、ア……!』

 全身から放射される紫の光。あれがあらゆる術の発動を阻害している。つまり先に彼女を倒さないと障壁も展開できない。
 障壁の代わりに彼女がなんらかの力で干渉しているらしく私もモミジも空中に留まったまま。でもそれは彼女の手の内から逃れられないことも意味する。
「あ……あ、あ……」
 そもそも反撃に出るどころではなかった。激痛に耐え、身悶えるだけで精一杯。ユカリの影は、そんな私に手を伸ばし、顔を掴んで自分の顔と同じ高さまで持ち上げる。
「……や、め……ああっ!?
 また頭の中に凍えるような記憶が流れ込んで来た。その記憶が意識を上書き、私の全てを塗り潰そうとして来る。
「あ……ぁ……ぃ……ゃ……」

 このままでは私が消える。消えて無くなってしまう。
 けれど、もう抵抗する力は残っていなかった。
 そんな私の耳に声が届く。


「……………………ぅぅぅぅぅぅ」


 彼方から響く、悲鳴?

「わぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああっ!?

 まさしく悲鳴。この状況には似つかわしくない素っ頓狂な叫び。

「むっ、事情は知りませんが!」

 別の少女の声が被さる。自分の顔を掴む指の隙間から私は見た。
 一振りの刃から灰色の炎が噴き出し、渦を描く様を。

「その子を離しなさい!!
『──!?
 灰炎を纏った白刃が閃く。それに切り裂かれたユカリの影は驚愕する気配を残して消滅した。たったの一撃で六柱の影を倒してのけた。
(な、何者……?)
 支えを失い落下する私の右手を、別の華奢な右手が掴み取る。
「大丈夫!?
 優しそうな長い黒髪の少女。繋いだ右手から暖かい力が流れ込んで来る。オレンジ色の光が細胞を傷付けていた冷たい魔素を包み込み無毒化してくれる。

 直後、自由落下が始まった。このままでは三人揃って墜落死。

「わっ──」
「ちょ、落ち落ち落ち落ち!?
 どうやらこの二人、空は飛べないようです。
 でも私の体には力が戻っている。傷が瞬く間に癒されたおかげで。
「みんな!!

 咄嗟に魔力障壁を再展開し、落下中のモミジ達を捕獲。
 もちろん目の前の二人も一緒に取り込みました。

「う、うわっ、浮いてる!?
「すごい、もしかして魔法ですか!? 魔女っ子ですよこの子っ!!

 まるで初めて魔法を見たかのような驚きぶり。
 服装も、どこか奇妙。まるで──そう思った私の頭に“日本人”という言葉が浮かんで来る。

「貴女達はいったい……?」
 年齢には差があるようですが顔は瓜二つ。良く似た姉妹? そもそも、どうしてこんな場所に……それにユカリの影を倒したあの力は、まさか……。

 二人は浮遊感を楽しみながら答えます。

「あ、あの、僕は浮草(うきくさ) 雨楽(うがく)
「私は鏡矢(かがみや) 雨音(あまね)です。ここで会ったのも何かの縁。一つ教えてもらえませんか?」
「何を……です? 私に、わかることなら……」
「ありがとうございます! それじゃあ遠慮無くっ!」

 問いかけに目を輝かせるアマネさん。
 その口からは意外な名前が飛び出しました。

「私達、この世界にいるはずの“ヒメツル”という人を捜しています!」
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登場人物紹介

 ヒメツル。薄桃色の髪で海を思わせる青い瞳。人々から「最悪の魔女」と呼ばれる十七歳の少女。世界最強の魔力を有し、その回復力も尋常でなく実質的に無限。才能には恵まれているが、師を持たず独学で魔法を使っており初歩的な失敗をすることも多い。十二歳前後から頭角を現し始めた。それ以前にどこで何をしていたかは謎。大陸南部の出身だという噂はある。

 ただでさえ美貌に恵まれているのに、それに魅了の魔法まで加えて馬鹿な金持ちを騙し、資産を巻き上げて贅沢な暮らしをしている。魔法使いの森の中に鎮座する喋って動いて家事万能の巨大なカエデの木「モミジ」が住み家。

 自由を愛し、宗教が嫌い。聖都シブヤで三柱教の総本山メイジ大聖堂に放火。全焼させて教皇以下の信徒達を激怒させ、討伐に向かった聖騎士団も悪知恵で撃退。以後は超高額の懸賞金をかけられ賞金首となるも、忽然と姿を消す。

 スズラン。生まれつきの白髪で青い瞳。最初は老人のような自分の髪を嫌っていたが、何故か反射光が虹色になると気が付いてからはお気に入り。

 ココノ村の雑貨屋の一人娘。ただし両親との血の繋がりは無い。赤ん坊の時、隣の宿屋の長男が生まれた夜、何者かによって彼の隣に置き去りにされた。その後、子供ができず悩んでいた隣家の夫婦に引き取られる。

 周囲には隠しているが強大な魔力の持ち主で魔法も使える。大人顔負けの知識まで数多く有しており、幼少期から神童と呼ばれる。

 両親の代わりに接客をしたり、服や小物を作って店に並べたりも。今や「しっかり者のスズランちゃん」の名は近隣の村々にまで知れ渡った。

 成長するにつれ賞金首の「最悪の魔女」そっくりになりつつある。村民達は薄々実母の正体を悟りつつ、彼女の幸せを願い、気付かないふりをしている。外部の人間と会う時は周囲の認識を阻害してくれるメガネをかける。友達の魔女から貰った。

 幼馴染のモモハルは自分の天敵だと思っている。だが、その割にはかいがいしく世話をする。周囲は二人が結ばれることを期待中。彼の妹のノイチゴは実の妹のように可愛い。

 モモハル。スズランがココノ村に置き去りにされる直前、宿屋の二階で生まれた少年。宿を経営する若夫婦の跡取り息子。後に妹も生まれる。プラチナブロンドで空色の瞳。母親似の顔立ちで中性的な美形。でも性格は完全に父親似。一途で尻に敷かれるタイプ。

 スズランとは姉弟同然の間柄だが当人は〇歳から異性としての彼女が好き。ある意味とてつもなくマセている。両親も妹も村の皆も大好きだけれど、一番好きなのは絶対的にスズラン。

 実はとんでもない能力を秘めており、育ち方次第では世界を滅ぼしてしまいかねない。その力のせいでスズランからは天敵と認識されている。天真爛漫だが人を驚かすのも好きないたずらっ子。

 スズランの心配をよそに、子供に大人気の絵本「ゆうしゃサボテンシリーズ」を読んでヒーローへの憧れを抱いてしまう。

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