第95話演奏開始直前

文字数 747文字

演奏会が始まる1時間前、元は演奏会場に入った。
「たまには真面目に指のウォーミングアップをしないと」
「何しろ今日は超大物との共演、ゴマカシが通用する相手ではない」

元が練習を始めた直後、本田美智子、佳子、山岡保もそっと会場に入り、元のピアノを聴く。
山岡保は微笑む。
「確かにクリアで、心に響く音だな」
「一音一音の魂というのか、それが深く強く」
本多美智子も頷く。
「後は・・・・スケール感、おおらかさかな」
山岡保
「演奏する曲にもよるが」
「実際に音楽の中で引きずり回せば気がつくはず」
音楽雑誌社の杉本が本多美智子の隣に座った。
「信者サイトで動画放送します」
「曲目の確認よろしいでしょうか」
山岡保が即答。
「元と本多美智子のベートーヴェンのロマンス第2番ピアノ伴奏版」
「元と春麗のカッチーニのアヴェマリア」
「それから私がアヴェ・ヴェルム・コルプス」
「その後は、元が好きらしいジャズを」
音楽雑誌社の杉本が驚いた顔になると本多美智子が笑う。
「実は保さんも私もジャズが好きなの」
「日本人の昔風の狭量な音楽家では理解できないけどね」

その本多美智子の言葉の途中から山岡保がピアノを弾く元の横に立ち、二言三言」。
元も驚いたような顔、しかしすぐに満面の笑みを見せる。
山岡保が戻って来た。
「元はギターとハーモニカでもいいとか」
「面白いセッションになりそうだ」
その話がうれしいのか、本多美智子はヴァイオリンを持ち、元の横に、チューニングと簡単な打ち合わせをしている。

マスターがマルコ神父とシスター・アンジェラ、探偵の中村、美由紀と奈穂美と一緒に入って来た。
少し不安で「やはり場違い」と引き気味のマスターにマルコ神父が声をかけた。
「ご心配は無用です、ここは神の家。神に招待されたのですから」
しかし、マスターはそれでも落ち着かない。
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