第91話演奏当日の朝②

文字数 768文字

元と本多美智子、山岡氏の三人の朝食をマルコ神父とシスター・アンジェラ、本田佳子、探偵の中村、音楽雑誌社の杉本、春麗と美由紀、奈穂美は窓から見ていた。
ただ春麗だけが加わろうとしたけれど、何故か足が動かなかった。
マルコ神父が頷き、つぶやいた。
「うん・・・これからか」
シスター・アンジェラは首を横に振った。
「わかっていないのは、元君だけ・・・」
「でも・・・後は神に託すだけ、血のつながりに託すだけ」
本田佳子,探偵の中村、音楽雑誌社の杉本は、落ち着かない表情。
美由紀と奈穂美はまだ意味がわからない。

元は意を決したのか、素直に本多美智子に微笑み、サンドイッチを食べた。
一般的なハムチーズ、玉子、林檎ジャムだったけれど、口には合うらしく食が進む。
また珈琲はホンジュラス,大指揮者山岡に少し頭を下げ、口にする。
これも好きな味のようで、目を閉じて「美味しい」と一言、自然に言葉が出る。

本多美智子は幸せそうな顔。
「うれしいな、今日もまた元君のピアノを聴けて、弾くこともできる」
元は戸惑いの表情。
「自分勝手に弾いているだけで、それほどでは・・・」
山岡氏は微笑む。
「昨日の録音を聴いた限りでは、美智子さんの気持ちがよくわかる」
「確かに一緒に演奏したくなる」
元はここでも戸惑った。
気恥ずかしい、程度の悪い「のん気な褒め言葉」としか、捉えていない。

そんな朝食が終わり、元が頭を少し下げ立ちあがろうとすると、山岡氏から声がかかった。
「元君」
元はただ「はい」と答え、山岡氏の次の言葉を待つ。
山岡氏のやさしい顔に、少し緊張が含まれた。
「演奏終了後に時間はあるかな」
本多美智子も緊張した顔で元を見ている。
元は「はい」と答えるしかない。

ただ、心の中では、二人の緊張の理由が不明。
「お話を聞く程度かな、演奏の批評か批判かダメだしだろう」程度で、その心を落ち着けることにした。
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