第33話元は奈穂美を完全に無視  元と美由紀の会話

文字数 1,013文字

午前中の講義が終わった。
奈穂美が、後ろを振り向くと、既に元も吉沢美由紀も大教室にはいない。
「何なのよ、いったい・・・」
奈穂美は、がっかりやら、プチ嫉妬やらで、機嫌が悪くなる。

そして、悪友女子は、この時とばかりに、容赦がない。
「そうかあ、じゃあ、元君はたまたまか」
「奈穂美に気があって、助けたわけではないと」
「美由紀ちゃんも可愛いし、お上品」
「先行きが楽しみだね」
「奈穂美も、そう思うでしょ?」

奈穂美は、懸命に、その場を取り繕う。
「だから言ったでしょ?」
「元君とは、偶然なの」
「そういう人なの」
しかし、機嫌が悪いので、その表情は全く冴えない。


さて、事実として、奈穂美に全く関心がない元は、吉沢美由紀と一緒にキャンパスを歩いているけれど、とても「上品」とは言えない会話をしている。

美由紀
「今日はオケの練習をサボるよ」

「俺には関係ない、勝手にしろ」
美由紀
「その切り捨て言葉も慣れると快感だよ」

「うるせえなあ、で、どこに連れて行く?」
美由紀
「何を言っているの?さっき言ったでしょ?」
「吉祥寺のマスターのところ」

「眠くて聞いていなかった」
「で、何しに行くの?」
美由紀
「マスターがご飯くれるって」
「それと話があるって」
元は不機嫌。
「歩くの面倒」
「でも、まあ、マスターには世話になっているし」
「お前の父ちゃんとは、デュオしたから、しょうがねえけどさ」
美由紀はプッと吹いた。
「ぶっきらぼうで、性格悪いけどさ、妙に義理堅いよね」
「それがメチャ面白い」
「スマホ持ってれば、毎日電話してあげるのに」
元は横を向く。
「いらねえや、そんなおもちゃ」

美由紀は話題を変えた。
「親父がさ、仲間を連れて来たいって、言ってたよ」
「何だっけ、ベイシーをやりたいとか」
元の目が、少しだけ光った。
「お前の父ちゃんがベースで・・・ギターも来るの?ドラムスは?」
美由紀は、してやったり、の顔。
「ほら、やりたいでしょ?」
「顔が変わってるし」
元は、また横を向く。
「お前とは合わせない、そんなこと言うから」

美由紀は、肩を元にあてる。
「お願いしても、絶対弾かないよね」
「でも、曲にもよるの?」
元は面倒そうな顔。
「だから、何を弾きたい?」
美由紀は。真面目顔。
「あのさ、アルペジョーネソナタを、深く」
元は、鼻で笑う。
「お前に弾ける?」
美由紀は、胸を張る。
「うん、練習した、親父のピアノで」

元は、美由紀の胸をちらっと見た。
「まだまだかもな」

直後、美由紀の左足が、元の尻を襲っている。
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