第11話奈穂美と母律子の会話

文字数 897文字

奈穂美は家に入り、母律子と話をしている。

奈穂美
「危ないところを救ってもらったんだけど」
母律子
「うん、大学の三井さんから、連絡があった」
「田中元君という子が、骨を折ってくれたんだよね」
「お礼も出来なかった、スタスタと歩いて行って」

奈穂美は下を向く。
「元君、入学の時から、同じフランス語なのに」
「私のこと、全然知らなくて」
「トラブルの後も、面倒そうで」
母律子も反応が難しい。
「うーん・・・」
「知っているとか知らないとか、好き嫌いで救った、そんな感じではないのか」

奈穂美
「転びそうだったから、受け止めたって」
「でも、ストーカー男を、やり込めてくれて」
母律子
「今時、度胸がある子だね、なかなかいないよ」
奈穂美
「そう思った」
「言葉とか態度は、冷たい」
「でも、頼りになる」

そんな話の中、母律子は、突然、立ち上がった。
そして、本棚をガサゴソと始めている。

奈穂美
「ねえ、母さん、何やっているの?」
母律子
「うん、ちょっと気になることがあってね」
「田中元君だよね」
奈穂美
「うん、それは言ったでしょ?」

少しして、母律子が引っ張り出したのは、一冊の古いプログラム。

奈穂美は首を傾げる。
「5年前の、東京都学生ピアノコンクール?」

母律子は、プログラムをめくる。
「この子だよ、田中元君」
「都大会優勝者になった、これが新聞の切り抜き」
「同じ千歳烏山で話題になってね」

奈穂美はキョトンとなった。
「え?私知らないよ、そんなの」
母律子の返事は明快。
「あなた、コンクールの日は、修学旅行でしょ?」
「だから知らないの」
奈穂美
「そうか、全然知らなかった」

母律子
「確か、ご両親も音楽家だよ」
「でも、日本より海外で仕事をしているみたい」
奈穂美
「何とかお礼したいな」
母律子
「そうしなさい、私も見かけたらお礼をします」


奈穂美と母律子が、そんな話をする中、元は街中華を出て家路につく。
「コニャックは、まだ半分あるかな」
「でも、今夜はバーボンにする」
結局、酒屋でバーボンを買い、家に戻った。

そのバーボンも、半分ぐらいを飲み、ベッドに横たわる。
「テキーラを一気飲みしたら、死ねるだろうか」
そう思うけれど、眠気と酔いが強い。
元は、そのまま眠ってしまった。
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