第29話元の食生活を奈穂美は知る 母律子の予想外の反応

文字数 1,185文字

雑誌社杉本は、元の食生活について、奈穂美に説明をする。
「子供の頃から、コンビニ食生活」
「ご両親とも音楽家で、忙しかったのかな、家にいなかった」
「日本にいないことも多かった」
「だから、食事を作ってもらったのは、あまりなかったとか」
「とにかく私が行くと、ゴミ箱にはコンビニのパンのビニール袋と牛乳くらい」
「ご飯を炊いて自炊とか、その気配はまるでない」

奈穂美は、心配そうな顔になる。

杉本は続けた。
「先ほど行って来たけれど」
「お酒、コニャックとかバーボン、日本酒か」
「それと缶詰だけ」

奈穂美は首を横に振る。
「母にそんなことを言ったら、怒ります」
「栄養学を学んでいるので」

中村は、その奈穂美をなだめる。
「いや、あくまでも、何を食べようと元君の勝手さ」
「家まで行くことはないかな」
「もし、元君の身に何かがあれば、連絡先になって欲しいかなと」
「たとえば、大学に来なくなったとか、それが続いたらで構わない」
「同じ千歳烏山に住んでいて、大学も同じだから」
「無理なら、何もしなくて、かまわない」

杉本も、中村の言葉に頷く。
「私も、元君の関係者の一人で、心配で仕方なくてね」
「何か気がついたことがあれば、連絡で構わないの」


探偵中村と雑誌社杉本との話は、そこまで。
奈穂美は、家に戻り、母律子に、「あれこれ」を報告。
案の定、母律子の顔が厳しくなった。
「元君に、そこまで心配してくれる人がいるのは、ありがたいこと」
「でも、両親のほったらかしが、酷過ぎる」
「コンビニの食生活だったのは、仕方ないかな、可哀そうに」
「夜のクラブねえ・・・」
「大人の世界で、奈穂美には無理」
「私が聴きに行くかな」
「それで元君を見たい」
「お酒と缶詰ねえ・・・気になるなあ」
「家政婦で行こうかしら」

母の予想外の言葉が続き、奈穂美は、うろたえている。
「家政婦は・・・やり過ぎだよ」
「気難しい元君なの」
「夜のクラブも、お母さんは似合わない」
「私も・・・子供で似合わないけれど」

しかし、奈穂美は、母律子の「言い出したら聞かない性格」をよく知っている。
だから、懸命に妥協策を言う。
「まずは、元君の家の前まで行って、観察をする程度でどうかな」
「栄養がつくものを持って行く」
「それで、この前のお礼にしようよ」

その妥協策で、母律子の顔が、少し落ち着いた。
「そうね、それは奈穂美にしては、名案」
「朝早めに届けなさい」
「その中村さんと杉本さんにも私からも連絡します」
「いろんなことを言えば、元君も受け取るかもしれない」

ただし、夜のクラブ行きは、諦めないようだ。
「奈穂美はお留守番しなさい」
「私は、元君の演奏を聴いて、一緒に帰って来ます」
「たまには、奈穂美のお世話を離れたいの、生ジャズピアノ、聴きたいもの」

奈穂美は、実に複雑。
「言い出したら聞かないし」
「奈穂美のお世話って何?」
ただ、奈穂美は、母律子に全く言い返せず、口を「への字」に結んでいる。
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