第80話養母晃子の死と、晃子の実家 そして大人たちの対応

文字数 1,297文字

田中晃子、実は離婚していたため、旧姓の菊池晃子の実家の動向を気にしていた中村に連絡が入った。
中村は、その連絡の内容を、マルコ神父とシスター・アンジェラに説明する。
「知り合いの博多の元刑事で、彼も、私と同じように探偵をしています」
「見張ってもらっていたところ、やはり動きがありました」
「血相を変えて、親分、つまり晃子の父が、屋敷を出ようとしたらしい」
「おそらく、パリに飛ぶ、娘の死を見に行くと」

マルコ神父とシスター・アンジェラが頷くと、中村は続けた。
「ところが、頭に血が昇ったのか」
「もともと、興奮すると、おさまりがつかない性格で」
「車も若い者には、運転させられないと、車庫の前で大騒ぎ」
「まどろっこしいとか、俺が運転するとか言い張った」
「しかし、どうにも、その顔が赤い、ロレツも回っていない」
「要するに、完全な酒気帯びで」

中村は、少し間を置いた。

「菊池の女房も乗っていたのですが、自宅を出て、数百メートルの交差点」
「スピード出し過ぎの上に、信号無視で、観光バスと正面衝突」
「そのまま、病院に直行、相当な重傷、重態とのことです」

マルコ神父は厳しい顔。
「怖ろしい・・・聖職者としては、憐れむべきなのですが」

シスター・アンジェラは、神に祈る。
「愚かな・・・実に愚かな・・・」
「これも神のご意思なのでしょうか」

中村は、腕を組んだ。
「その連中と元君を関わらせることは、絶対に、させないようにしないと」
「出来る状態ではないと思いますが」

マルコ神父が全員の顔を見た。
「いずれによ、警戒は怠りません」
「それと、日曜の集会が終わるまでは、元君には知らせません」
「ここで、不用意に事実を告げて、混乱させたくはない」

シスター・アンジェラは頷いた。
「まずは、元君と血がつながっている、山岡さん」
「それから本多美智子さん、と祖母にも、その旨を」
「何とか元君を田中の姓から、山岡か本多にするべきかと」
「それも早急に」

中村は、頷いた。
「早速、その手続きを調べます」
「元君は、驚くだろうけれど、モタモタするべき話ではない」


そんな話をしていると、若者たちの一行が戻って来た。
シスター・アンジェラは、元と美由紀、奈穂美を待たせ、まず、春麗を別室に呼ぶ。

「急に戻してごめんね」
「事件が起きていることは事実」
「元君に話すべきだけれど、明日の集会の後にしようと、話し合いました」

春麗は、シスター・アンジェラの顔と声から、事件の重大さを感じた。
「わかりました、ご指示の通りにします」

シスター・アンジェラは、苦し気な顔。
「とにかく、私たちには、こうするしか、考えられないの」
「できるだけのことしか、できないけれど」
「とにかく、元君を、これ以上困らせたくない、苦しませたくなくてね」
「そもそも、何の罪もない、悪意のない子なのに」
「どうして、いろんなことが、降りかかって来るのか」

春麗は、シスター・アンジェラの手を握る。
「お任せください、元君を、元気にするのが、私の役目です」

少し間を置いた。
「何があっても、元君を元気にさせます」
「離れたくないので・・・ずっと」
「これも神のご意思かと」

シスター・アンジェラは、春麗の手を、力強く握り返している。
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