第28話千歳烏山の喫茶店にて 中村と杉本、そして奈緒美

文字数 1,181文字

喫茶店では、まず、お互いの自己紹介など。

鈴木奈穂美は、元と同じ大学、同じクラスであること、最近発生したストーカー事件で元に助けられたこと、何とかお礼をしたいが家がわからないとのこと。

杉本は、元が小さな頃からの付き合い、都のコンクールでは取材をした担当者であること。
ただし、元が孤児であるとか、家庭環境は言わない。

中村は、元が出入りするクラブで演奏を楽しみにしている客であることと、元警察関係者であることを告げる。

奈穂美は、中村の「元警察関係者」に反応。
「あの・・・元君が何か?」

中村と杉本は、顔を見合わせて笑う。
中村
「いや、最近、クラブにも来ないのでね、そこのマスターが心配して陣中見舞いを」
杉本
「私も偶然、元君の取材をしたくなって来てみたの」
「元君が、犯罪者とか、そんなことではありません」

鈴木奈穂美は、ホッとした顔。
そして質問。
「元君が出演するクラブは・・・どこでしょうか」

これには中村が言いづらそうな顔。
「吉祥寺なんだけれどね・・・」
「気まぐれで来て、毎日ではないよ」
「深夜遅くもあるから、女の子は危険な時間帯」
「それと、ここ最近は来ていないかな」
「あてにしてクラブに行っても、ガッカリするし、深夜の吉祥寺は危険」

杉本は、元のクラブ演奏情報は疎いので、黙って聞いている。

鈴木奈穂美は、仕方ないと言った顔で、話題を変えた。
「あの・・・私の家にも来たのですが」
「もしや、深沢と言う人が、元君の家に行きませんでした?」

杉本が反応した。
「深沢さんって、ピアノの先生でしょ?」

奈穂美は「はい」と頷く。

杉本
「はい、来ました」
「元君が出たくないと言うので、居留守を」
「とにかく無理やりなことを言ったようで」
「居留守を使ったら、泣いて怒って帰りました」

奈穂美も頷いて、深沢ピアノ講師が、突然、自分の家に来た時の様子を話す。
深沢ピアノ講師が、自分の京都旅行を優先して、以前から深沢が弾くと決まっていた地区文化祭のママさんコーラスのピアノを、奈穂美に押し付けようと、しつこく粘った話。
その強引さと厚かましさに母が怒って三行半を突き付けた話。
その際に、「しっかりとしたピアニスト、奈穂美と同世代」にも頼み、居留守を使われたらしい、などを、伝えた。

今度は黙って聞いていた中村がプッと笑い、杉本はため息。
「以前見た時も、相当軽薄な、自分勝手な人だったけれど」
「弟子を守るよりも、自分の立場や都合を優先」
「甘やかされて育った、まるでガキのような女」
「とても、指導者とは言えない」

杉本が話題を変えた。
「まあ、それはそれとしてさ」
「同級生か・・・家を教えるよ」
「頼みたいことがある」

奈穂美は中村をじっと見る。
「と・・・言いますと?」

杉本は、中村の言いたいことがわかった。
「元君ね、食生活がメチャクチャなの」
「気にかけてあげて、このままだと、危ない」

中村は頷き、奈緒美は身を乗り出している。
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