第94話マスターも鎌倉へ

文字数 718文字

マスターは鎌倉で元の演奏を聴くために、吉祥駅まで急ぎ足で歩いていた。
途中、サンロードで元を無実の罪で暴行の上、吉祥寺署まで連行した警察官と目が合った。
やはり性質が悪い男らしく「おい!どこへ行く!」「お前のせいで俺は酷い目にあった」と凄まれたけれど、マスターも即時に言い返した。
「あんたの一般人暴行ビデオがまた手に入っているぞ」
「今度は容赦しねえ」
「署長止まりじゃねえぞ、元警視庁の中村弁護士にも渡してある、即マスコミにも本庁にもネタが飛ぶ」
「いいか、首を洗って待ってろ!」
真っ青な顔で言葉を返せない警察官など見向きもせず、吉祥寺駅に到着、井の頭線に乗り込んだ。
幸い、日曜日の早朝、座れたので、探偵の中村に連絡を取り、即「了解!」の返信を受け取り安堵する。
ユリ。ミサキ、エリの寂しそうな顔が浮かぶ。
「まあ。今日の所は出番はないな、どうにもならん」
「今後、クラブで弾いてくれるかどうかもわからん」

マスターが渋谷で乗り換えようと構内を歩いていると、いわゆる「9条を守れ、自衛隊解散、米軍撤退」のデモに参加するのだろうか、プラカードを持つ子供連れの10数人を見掛けた。
マスターはため息をつく。
「平和、平和と呪文を唱えていれば、安全は守られるのか」
「どうとも、俺みたいな馬鹿にはわからんが」
もともと興味が無いので通り過ぎる。

湘南新宿ラインに乗り換えると音楽雑誌社の杉本から連絡が入った。
「元君と実の両親3人が朝食」
「ただ、元君はまだ理解していない」
「実の親は気持ちを固めました」
「結婚式も、この後教会でする予定」
「後は、元君次第」

マスターは目を閉じた。
「一番の問題が・・・・」
「でも、俺は俺なりに元君を救いたい」
マスターは腕を組み考え込んでいる。
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