第43話保護された教会にて(3)

文字数 760文字

シスター・アンジェラが元の手をそっと握る。
「大変だったね、元君」

元は、顔をクシャクシャにして、声を出せない。

シスター・アンジェラは元の髪を撫でる。
「ごめんなさい、辛い思いをさせて」

元は首を横に振る。
ようやく、言葉が出た。
「また・・・馬鹿な・・・ことをして」

マルコ神父も、元に声をかけた。
「ここは、鎌倉の教会」
「そこの中の病院」

元は、また泣き出した。
「迷惑をかけて、ごめんなさい」
それでも起き上がろうとする。
顔がゆがむので、痛みがあるようだ。

大塚医師が元を諭す。
「まだ寝ていなさい」
「まだ酷い打撲の痛みは残る」

シスター・アンジェラ
「当分、ここで預かります」
「説明することもあるし、話を聴かなければならないこともあるの」

元は抵抗しない。
「わかりました」
「でも、説明とは?」
元も正気に戻ったような顔。

マルコ神父とシスター・アンジェラが、鎌倉駅で元を見掛けてからの話をすると、元は肩を落とす。
「見られていたとは」
「それでここに」

マルコ神父
「気がついてよかった」

シスター・アンジェラは、「家の鍵」を。元に見せる。
「神のご意思ですよ、元君」
「元君が苦しむのも、救われるのも、神のご意思」

元は、ハッと顔を赤らめた。
「捨てた・・・」
「シスターが?」

シスター・アンジェラは、元の髪を撫でる。
「詳しい話は、もう少し落ち着いてから」
そして春麗を手招き。
「元君、看護師の春麗さん」
「元君の当面のお世話係」

元は、戸惑いを見せる。
「え・・・どうして?」

大塚医師が説明。
「まだ打撲は残る、身体を捻るにも痛いはず、それと健康管理」
「身体だけではないよ、心の健康管理もある」

春麗は、笑顔で元に近づき、手を握る。
「横浜駅でピアノを聴いたよ」
「ありがとう、感激した」
「だから、お返しさせて」
「嫌と言っても、認めない」

元は、恥ずかしいので、顔を赤く染めている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み