第58話例の都議の失脚

文字数 1,164文字

翌朝、マスターがテレビをつけると、いきなり例の都議の顔が、映っている。
アナウンサーが語るのは、どの局も、ほぼ同じ。
「都議は、風俗通いが常態化」
「風俗嬢に暴言、暴行」
「サービス料を払わない」
「本人は否定するが、風俗店や風俗女性からの証言や証拠が次々に」
「常日頃、青少年の健全育成を政治信条と語りながら」
「警察当局も告発を受け、捜査を開始」

PCやスマホを見ると、風俗店の出口で風俗嬢と抱き合う画像、それも複数の店。
またテレビ局と同じように、風俗店や風俗嬢からの証言が、飽きるほど記事になっている。

「面白いことになるな」
「新聞も週刊誌も大騒ぎになるな」

マスターが笑っていると、風俗嬢のミサキからスマホに着信。
「まだまだ、出るよ」
「楽しみにしていて」

マスターはそれでも心配する。
「変な圧力はなかった?」

ミサキは即答。
「ないよ、あれほど、はっきりした写真があるしさ」
「女の子たちも、これ以上は我慢できなかったしさ」
「それも、うちの店だけでない、あちこちの店でね」
「あいつね、マジに女の子を馬鹿にしているし」
「人間と思っていないの、ゴミみたいに扱ってくるし」

ミサキは話題を変えた。
「ところで元君はどう?」
「そっちのほうが気になる」

ミサキの声が湿った。
「でも、教会だよね」
「ユリもエミもお見舞いしたいって・・・でもね」
「私らみたいな、女は入れてくれるのかな」
「汚れた女だよ、清らかな人たちから見れば」

マスターは答えをためらう。
「俺がどうのこうのは言えねえ」
「元君は、今はリハビリの真っ最中」
「清らかな人たちには・・・わからねえなあ」
「でもな、お前らは、元君を救ってきただろ?」
「それについては、聖なる行為で、神が宿るとかって言っていた」
「まあ、お前たちの仕事は言ってないけどな」

ミサキの言葉も微妙。
「私たちは、元君が可愛かった」
「自分たちも、元君の音楽と、身体で癒されたしさ」

マスター
「無理して鎌倉まで行かなくてもいいだろう」
「戻って来たら、面倒見てやってくれ」
「とにかく食生活がひど過ぎる」
「それも、上手に、トラブルがないように」

ミサキの声が落ち着いた。
「そうしたほうが無難かな、ユリとエミも逢いたくて仕方がないけど」
「3人で相談してみる」

ミサキとの電話を終え、マスターは音楽雑誌社の杉本に連絡を取る。
「杉本さん、動画を本格的にやろうと思う」
「機材とか、その面に明るい人を紹介して欲しい」

杉本は弾んだ声。
「その前に例の馬鹿都議は、辞職らしいね」
「もっと叩いてもいいかな」
「それで、動画の機材は、上司と編集長が任せろって言っている」
「彼らは、そういうオタクなの」
「元君を本格的に復活させたいみたい」
「マルコ神父の教会にも行くって」
「同じ機材を使ったほうが、スムーズに行くらしい」

マスター
「後は、元君かな」

杉本は、少し笑った。
「一番難しいかも」
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