第30話吉祥寺のクラブで密談 元は鎮痛剤を余分に飲む

文字数 1,207文字

探偵中村と雑誌社の杉本は、鈴木奈穂美と別れ、吉祥寺へ、そしてクラブに入った。
杉本はクラブ全体を見回して、驚くやら感心するやら。
「ここが元君が弾くクラブ?」
「高級ホテルみたいで、いい感じです」

マスターは、カウンター席に座った杉本の前に、水割りを置く。
「いろいろ骨を折ってもらって、ありがとう」

中村も、杉本に礼を言う。
「杉本さんがいてくれたから、かなり調べが進んだよ」

杉本は、水割りが美味しいらしい。
「いえいえ、こんな高級クラブの水割り、味わっております」
「それと、私も、あの馬鹿都議と、女たらしの尾高をギャフンと言わせたくてね、お礼などいりません」
「何より、元君が心配だったから」

マスター
「中村さんから聞いたかな」
「莱週あたりに、都議については、週刊誌が騒ぐよ」
中村
「直接、元君とは関係ないけどね」
「マスコミから、かなり叩かれるはず」
杉本は、水割りを、また一口。
「尾高さんも、何とかつぶしたいなあと」
「かなり、胡散臭い、特に女には」

マスターが頷く。
「それも、伝手があってね、今、探っている」
「細かなボロは出しているけれど」
「噂で聞くのは、美人ソリストとか、美人女子音大生か・・・」
「ステージを準備するとか何とかで、たぶらかして、食い物にする」
「一度か二度、遊んで、また次の女に移る」
杉本は、マスターの情報に驚く。
「いや、私より、詳しい?」
「一体、誰から?」

マスターは苦笑い。
「ああ、このクラブね、音楽業界の人がよく来るよ」
「元君のピアノ目当てでね」
「それで、プロの演奏家も来る、評論家も、マスコミも来る」
「ちらっと聞いたら、あることないこと、話してくれるよ」
「まあ、よほど尾高って人は評判が悪いのかな」

中村は話題を変えた。
「それでね、例の高輪の教会と言うか、児童売買の施設」
マスターの顔も厳しくなる。
「まあ、用心してくれよ」
「どんな危ない奴がバックにいるとも限らない」
中村は、落ち着いている。
「それはわかっているさ」
「まずは、弱みを確実に握ってから」

マスターが、中村をじっと見る。
「中村さん、何か・・・もしや?」
中村は、含み笑い。
「少し時間を欲しい、手段は明かせないけどね」


元は夜中の3時に一旦目を覚ました。
風呂に入るけれど、あまり落ち着かない。
ものの5分で、出て来てしまった。
新聞配達だろうか、バイクの音が聞こえた。
「ご苦労なことだ」と思うけれど、自分には無理と思う。
「俺みたいな馬鹿には、真面目な労働は似合わない」

そんなことを思い、ぼんやりしていると、また頭痛がぶり返してきた。
「馬鹿は風邪引かないのに」

そう自嘲するけれど、痛みに負けた。
買って来てもらった薬箱を開け、鎮痛剤を飲む。
ただ、適量などは考えない。
「余分に飲めば、余分に効くはずだ」
「それでなくても、俺は馬鹿で頭が悪い」
「余分に飲むくらいが適量だ」

結局、余分に飲むと、少しして眠気が強くなった。
ベッドに転がり込むように入って、朝まで目が開くことはない。
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